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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase28:「赤骨」

 あの後、結局気を取り直して訓練に……と言う気分にもなれず、召喚時間をフルに使ってフェイトとゆったりと過ごした。

 「たまにはこう言うのも良いよね」なんて笑いあって、身体を動かすでもなく、迷宮に潜るでもなく、静かな時間が流れる。
 いつもなら対面のソファに座るフェイトだけど、今日は俺の隣に座ったままだ。先ほどの余韻か、寄りかかられた右肩の暖かさが心地よく、思わずふぅっと安堵にも似た息を漏らした俺に、フェイトは「どうしたの?」と声を掛けてくる。

「ん……何となく」
「……そっか」

 そんな先ほどの焼き増しのようなやり取りに、恐らくフェイトもそう思ったのだろう、同時にくすりと笑みを浮かべた。
 この世界に召喚されてから既に10日以上。ほとんど休み無しに突っ走ってきた気がする俺にとって、こうして心を休める時間ってのは必要だったのかもしれない。
 そして俺がソレに気付いたのは、フェイトの召喚時間を終え、彼女を見送った直後だった。
 確認したディレイ時間に違和感を覚え、ふと『ステータス』を見たそこに踊る、【スキル】がレベルアップしました! の文字。
 そして表示されている、伸びた召喚時間と減ったディレイ時間。
 伸びた時間は30分。減った時間は35分。つまりは、これまでより30分長く召喚できる上に、ディレイは5分短くなるってことで。
 とは言え、現在時刻から勘案するに、このレベルアップが適用されるのはこのディレイかららしい。つまり、今回に限って言えば、これまでよりも35分早くフェイトを召喚できるってことだ。
 その事実にうんうんと満足して頷きつつ、とりあえず昼食にするか、と腰を上げた。

 その後、魔法の練習等、一人でできる鍛錬をこなしてディレイ中の時間を過ごした後、迷宮へと入り、昨日と同じように、3階へと下りる階段の前まで慎重に進む。
 幾度かの戦闘をこなして、3階への階段に到着。周囲に敵が居ないのを確認してからフェイトを召喚する。

「『召喚サモン:フェイト・テスタロッサ』」

 いつものように俺の手の先に現れた球状魔法陣が砕け、その中からフェイトが現れる。
 彼女は「あれ?」と小さく呟き、キョロキョロと周囲を見回してから、俺の方へと向き、

「あれ、迷宮?」

 小首を傾げて疑問の声を上げた。
 どうやら、減少したディレイ時間の分、昨日よりも早く召喚したから、迷宮に入る前に召喚したのだと思ったようで。
 そんな彼女に【スキル】のレベルアップによる召喚時間の延長と、ディレイ時間の減少について説明すると、フェイトは「そっか」と安堵の息を吐く。

「てっきり、ディレイ時間が終わる前にここまで来たのかと思っちゃった」
「あー……確かにそう思うよな。ごめん」

 頭を下げた俺に、フェイトは「いいよ。謝らないで」と笑みを浮かべた。

「葉月と一緒に居られる時間が増えるのは、嬉しいから」

 そう言うフェイトの顔に浮かぶ微笑は柔らかくて、綺麗で。思わず見惚れてしまったとしても、仕方が無いことじゃないだろうか。うん。
 何となく気恥ずかしく、「行こうか」とフェイトを促すと、くすりと笑われてしまった。バレバレですか。

「うん。……バルディッシュ、セットアップ」
《Yes sir.》

 フェイトの身体が魔力の光に包まれて、一瞬の後にその姿をバリアジャケットへと変える。
 手の中に現れたバルディッシュを軽く一振りした彼女は、うん、と確認するように一つ頷いたあと、「いいよ、行こう」と声を掛けてくる。
 それに頷き返して──ああそうだ、これは言っておかないとなと思い立って、「フェイト」と声を掛けた。

「なに、葉月?」
「……俺も嬉しいよ」

 うん、やっぱり気恥ずかしい。
 きっと赤くなってるであろう顔を見せないように、俺はフェイトに先んじて階段を下りた。



……



 4階の探索は順調に進み、開始から1時間程で残りの未踏破区域を探索し終えた。現在俺達が居るのは、5階へ下りるための階段の前だ。
 簡単に計ってみたところ、3階への上り階段からここまでは、約20分。敵との戦闘による誤差を考えても、30分を見ておけば問題は無い。
 そうなると、帰りに掛かる時間を差し引いて、探索に使える残りの時間は1時間ちょっとと言ったところだろうか。
 そんな事をフェイトと話したあ後、「下りてみる?」と問い掛けて来た彼女へ「そうしようか」と頷いた。
 1時間もあれば、少しは地図を埋めることも出来るだろう。
 フェイトと並んで階段を下りる。無論、例の如く警戒は怠らない。
 そして俺達は、5階へと足を踏み入れた。ここからは完全に始めての場所だ。油断しないようにしないとな。
 階段を下りた直後の場所は、他の階と変わらず小さな広間のようになっていて、この階は正面にのみ通路が延びているようだ。。
 仮に出現する敵の種類が4階と変わらないのであれば、上空からの奇襲は無いだろう。そう思いつつも、何となく上を見上げ──。

「うおおっ!?」

 そこに見えた思いもよらぬ光景に、思わず叫びながら咄嗟に隣のフェイトを抱きかかえてその場を飛び退るように離れる。

「きゃあ! は、葉月!?」

 突然の俺の行動に、腕の中のフェイトが慌てた声を上げるも、それ以上の言葉は続かなかった。次の瞬間、つい今しがたまで俺達が立っていた場所に、俺がこんな行動を取った“原因”が降って来たからだ。
 ドサッ……と言うよりもドチャッと言うかグチャッと言うか、何とも表現しにくい生々しい音を立てて落ちてきたゾンビ・・・。この迷宮では、モンスターは壁や天井・・の特定の部分に魔力が溜って、それが臨界に達したら生れ落ちてくる。以前に壁からネズミが生える用に出てきた事を見たことがあったが、今回は要するにそれのゾンビの天井版である。しかも丁度俺達の真上に。
 フェイトは地面に落ちてもがくゾンビを見て一瞬固まったあと、俺の方へとゆっくりと顔を向け、

「えっと……葉月?」
「ん?」
「その、ありがとう」

 そんな彼女の様子に思わずクスリと笑いつつ「どういたしまして」と返すと、フェイトは「もうっ」と頬を赤くしながらゾンビの方へと視線を向け、次いでバルディッシュの先端をゾンビへと向けた。

「バルディッシュ」
《Yes sir... Photon Lancer》
「ファイア!」

 フェイトの前に生成されたフォトンスフィアから発射された槍状の魔力弾は、ようやく起き上がろうとしていたゾンビの頭を撃ち抜いて魔力へと還す。
 カランと音を立てて魔結石が地面に落ちるのを見送ったところで、フェイトが俺の顔を見ておずおずと声を掛けて来た。

「あの、葉月……? そろそろ……」

 フェイトのその恥ずかしげな様子を滲ませた言葉で、自分の今の状態に思い至って「あ、ごめん」と慌ててフェイトを離す。そんな俺に対して、フェイトはぶんぶんと勢い良く首を横に振る。

「あ、違うの。嫌じゃないんだよ? ただ、その、流石に今はこうしてるわけにも行かないって言うか……」

 フェイトのその様子が可笑しくも可愛く、思わず笑いながら「解ってる。ありがと」と言うと、フェイトは恥ずかしげに顔を伏せ、恨めしげな眼でこっちを見ながら「うぅっ」と小さく唸る。
 そんな姿もまたやっぱり可愛く、いつまでも見ていたい気分ではあるのだけれど、そうも言ってられないのが哀しいところか。
 「そろそろ行こうか」とフェイトを促し、階段の正面に延びる通路へと歩を進める。
 通路自体は真っ直ぐに延びており、見える範囲に別れ道などは無さそうだ。
 そのまま警戒しつつ、フェイトと並んで歩くこと20分程度だろうか。途中ゾンビとスケルトン、それぞれ1体ずつと戦闘を行ったのを除いて変わったことも無く、ひたすらに真っ直ぐに道が続いてたいた。
 「随分と長いな」とフェイトと話したところで、唐突にその通路が終わりを迎える。結構な広さの広間ホールに出たのだ。

「葉月、あれ」

 フェイトに促され、彼女が指差す先を見ると、そこに見えるのは下へと続く階段。……何とまぁ、この階は直線とホールだけの階ですか。……何て言うか、いかにも“何かあります”と言うような展開だなぁ。
 フェイトに視線を向けると、彼女は少し考えたあと、うんと一つ頷いて、

「やっぱり、ここは一回戻った方がいいと思う」
「フェイトもそう思うか。絶対何かあるよなぁ……」
「うん」

 そうと決まれば、と、広間から出ようとした時だった。
 逃がさんと言わんばかりに、出口に魔力と思わしき不可視の──正確に言えば、眼を凝らせば何かがあると解るけれど──壁が張られる。

「これ、あの時の……!」

 フェイト言ったのは、恐らく4階で入ったゾンビ部屋のことだろう。
 それに思い至った俺達は、ほぼ同時に振り向いて広間の中を警戒する。
 次の瞬間、それは起こった。
 広間の中央付近に、赤黒く輝く魔法陣が展開され、そこから這い出すように、1体のスケルトンが現れる。
 だが、そのスケルトンは今まで遭遇したものとは一線を画していた。
 その身体を構成する骨は、それが現れた魔法陣の色と同じように赤黒く染まり、右手には刀身も、柄も赤く染まったロングソードをぶら下げている。

「……『アナライズ』!」

 咄嗟に解析をかけるが、俺の前に現れたウィンドウに表示された情報に、苦虫を噛み潰した。



名前:『血染めの赤骨スカーレット・ボーン』エルヘイト
カテゴリ:魔造生物モンスター/アンデッド/ネームド
属性:闇
耐性:闇
弱点:光・火/頭部
「かつて大陸に栄えた、ルディエント王国。その王国第二騎士団副団長『血染めの剣鬼』エルヘイトの成れの果て。アンデッド化による影響から弱体化しており、生前程の強さは無い。とは言えその魂に染み付いた王国剣術の腕は、並みの兵士では及びも付かぬ冴えを見せるだろう。魔力の篭められた剣である『クリムゾン・エッジ』を振るい、侵入者の血で己の身体を染め上げる」



「……名有りネームドモンスター……中ボスってやつかね。情報が全部表示されたってことは、俺とソレほど能力が離れてるってわけじゃないと思いたいが」
「そう思うけど……油断はだめだよ?」

 表示された情報を読み上げ、フェイトとそんな会話をしたところで、前方に佇む敵──スケルトン・エルヘイトがその右手に持つ剣を一振りする。
 その瞬間、エルヘイトの背後に幾つもの黒い魔法陣が展開され、そこから無数のスケルトンが這い出てくる。その数はざっと見たところで20体は居そうだ。
 ……取り巻きってところか。数も多いし、厄介だな。

「……フェイト、とりあえずあの赤いのは俺が相手をする」
「解った。じゃあ周りのを倒したら、すぐに手伝うから。無理はしないで」

 フェイトと言葉を交わして頷きあい、武器を構え──。

「行くぞ!」

 同時に敵に向けて駆け出した。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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