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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

永遠神剣之章:42.狭間、たゆたう者。

 気が付くと、真っ暗な空間の中に居た。周囲を見回すも何もなく、ただ暗い……否、黒い空間が広がっている。……ここは……覚えがある。またあの“夢”だ。……ってことは、居る……んだろうな、“彼女”が。

 そんな風に思った矢先、俺の考えを読んだかのように、声が響く。

「くふふっ……久しいの、『渡りし者』よ」

 声のしたほうを向けば、まるで始めからそこに居たかのように佇む、ユーフォリアそっくりな少女。違いはその身につける服や鎧、髪や瞳が漆黒であることであろうか。

「本当に……君は一体……」
「ふむ……言わずとも、察しはついているのであろ?」

 思わず漏れ出た俺の言葉に、くすりと笑って目を細める少女。
 その顔は「申してみよ」と言っているようで、俺は自分の考えを口にしていた。

「……君は……高位の永遠神剣。恐らくは…………第一位……」
「ほぅ……何故そう思う?」
「君は以前、俺に対して『担い手たりえる者』って呼んだ。……である以上、君が永遠神剣であるってのは間違いないだろう?」

 俺の問いに、くつくつと笑いながら「まあそうじゃな」と言う少女。

「では……なぜわらわが第一位である、と?」
「……俺の知っている限り、今の君のように姿を変え、担い手も無しに自ら動いたのは2人……第一位の『叢雲』と『聖威』だけ。それをふまえて……うろ覚えではあるんだが、確か第二位の『虚空』が契約者と契約を結んだ理由……担い手が居なければ動けないために、パートナーを欲したから……だったはずだから」
「第二位である『虚空』が写し身を顕現できず、第一位である『叢雲』と『聖威』が顕現できる以上、妾もまた第一位である……かの?」

 彼女がまとめた言葉に「そうだ」と頷くと、彼女はこちらをじっと見つめた後、楽しそうに再びくつくつと笑う。

「……ふむ。コレは所詮は夢。現実では無い世界。故に妾がこのような姿を取っている、と言う可能性は?」
「それは……」
「…………くふっくふふふっ。まあよい、正解じゃ、『渡りし者』よ。褒美に妾の事を少し教えてやろう」

 そういった少女は、手を胸の所へとやり、見惚れそうな笑みを浮かべて、自らを誇るかのように悠然と言い放つ。

「……妾の名は『調和』。永遠神剣第一位にして、数多ある永遠神剣の中で、唯一『鞘』から生まれた永遠神剣。それが、妾じゃ」
「……『鞘』……から?」

 ……第一位であることは予想していたとはいえ……いや、予想していた以上の事に驚いた。
 永遠神剣の最高位にして、『コズミックバランサー』とも呼ばれる原初たる神剣は3本。『天位・永劫』、『地位・刹那』、そして『鞘・調律』。
 『天位』と『地位』は対立関係にあり、『鞘』はその両者の力を抑えるためにあるという。
 この世界に存在する永遠神剣は『天位』と『地位』から生まれ、天位属性の神剣と地位属性の神剣もまた対立しているのだとか。
 ……まあ、天位属性の『運命』を持つローガスが、地位属性の『叢雲』の化身であるナルカナを気にかけていたり、『叢雲』を封印するために最初に動いたのが、同じ地位属性の『聖威』であったり、天位属性の神剣を持つエターナル同士で、ロウとカオスに分かれて争いあったりとか、一概には言えないのだけど。
 ともかく、そんな原初神剣のうち、『天位』と『地位』の力を抑える神剣より生まれた唯一の神剣にして、原初神剣を除けば永遠神剣達の最上位に位置する第一位の神剣とは……果たして、どれほどの力を持っているというのか。
 けれど、なるほどとも思う。
 エターナルである『聖賢者ユート』と『永遠のアセリア』との間に生まれた、生まれながらのエターナルであるユーフォリア。彼女と『悠久』は力の衰えた『調律』が、その力を取り戻すために転生した姿だったはず。
 目の前の彼女が今の姿で現れた時に言っていた言葉……“この姿は妾にとっても馴染む”ってのは、こう言う事だったのか。

「でも……そんな君が何故『世界の狭間』なんて所に?」
「なに、母たる『調律』が力を失って転生した折、妾の事を目障りに思うた他の神剣達に封印されただけじゃよ」
「目障り?」
「左様。あ奴らにとっては、あ奴ら自身ではない第三者に、パワーバランスを取られる事が気に入らなかったのであろう」

 彼女の言葉に「なるほど」と頷き、この際なので、疑問に思っていた事を訊いてみることにする。

「……君が『ログ領域』で俺に『世界を繋ぐ扉ワールドゲート』を開かせようとしているのは……そこから出るため、なんだろ?」

 俺の問いに彼女は「うむ」と頷くと、「それがどうかしたかの?」と訊ね返してくる。

「出た後は……閉じ込めた連中に復讐でもするのか?」

 次いで訊ねた問いに対しては、ふるふるとかぶりを振った。

「……確かにあ奴ら……特に妾をここに閉じ込める中心となった『虚空』や『運命』、『聖威』は腹立たしくはあるがの。……正直、今はあ奴らはどうでもよい」
「じゃあ、出たら何を?」
「うむ。……妾は、ぬしの旅に同道したいと思うておる」
「……別に俺が、必ずしも君の担い手になる、ってわけじゃないぞ?」
「わかっておる。現状ではぬしは、妾の担い手になりたいとは思うておらぬことも、な。妾としても、“妾の担い手になる”と言う事を軽々しく考えては欲しくはないので其れで良い」

 彼女はそこまで言うと一度言葉を区切り、今度は先程までの様な楽しげな笑みではなく、静かで、優しげな微笑を浮かべ──その、先程までの彼女とも、ユーフォリアの雰囲気とも違う微笑みに、不覚にも少しドキリとした。

「そしてそれでも、じゃ。……ここに永く居ると、時折“世界を隔てる壁”が揺らぐのか、“壁”の向こう側の世界が垣間見える時があっての。それは妾達の属する永遠神剣の世界であったり、全く別の世界であったりする。……この何も無い場所に永らく閉じ込められ、時折そのような世界を見させられておるとな……『探求』でなくともそれらの世界を見聞きしてみたい、と思うのよ」

 「だから、ぬしと共に様々な世界を旅してみたい」と、今度はまた楽しげにくふふと笑う彼女は、本心からそう言っているようで……気が付けば俺は、「解ったよ」と、強く頷いていた。

「……ありがとう、『渡りし者』よ。……ん? ……ふむ、どうやらそろそろ目覚めねばならぬ時間のようじゃな」

 彼女のその言葉を切欠とするかのように、周囲の暗闇の空間がゆらりと揺れる。

「……最後に、妾からぬしへ宿題じゃ」
「宿題……?」
「うむ。次に逢うまでに、妾の“この姿”の時の名を考えておくがよい」

 その予想外すぎる『宿題』に、思わず「は?」と間抜けな声が出ていた。
 そんな俺の様子に、彼女は満足げに、楽しげに笑う。

「くふふっくふふふふっ。良き名を期待しておるぞ……祐?」
「っておい、そんな勝手な!」
「ほれ、早う目覚めねば……“間に合わなくなる”ぞ? では、また逢おう」



……
………


 “眼を覚ます”。
 いや、どちらかと言うと飛んでた精神が肉体に戻ってきた、とでも言うのか……夢とは思えない鮮明な夢と、寝ていたとは思えない疲れた気分に嘆息しながら身体を起こした。

「あら、眼が覚めたのね?」

 掛けられた声の方をみると、白衣を押し上げる豊かな双丘。
 …………。

「ああ、ヤツィータか」
「その判断の仕方はどうかと思うんですが……」
「うむ」
「まったくです」

 ぽつりと呟いた言葉に帰ってきた反応に、ヤツィータとは反対の方を向けば──ちなみにヤツィータは苦笑していた──若干呆れ顔のフィアと、彼女の両肩に座るナナシとレーメ。
 いやまあだって仕方ないじゃないか。眼に入ったんだもの。
 凝り固まった身体をほぐしながら周囲を見回すと、もう何度と無く見た風景……保健室か。

「それで……まあその様子だと精神的には大丈夫そうだけど、身体の方はどう? まだあれから一日しか経っていないから、なんだったらもっと休んでいてもいいのよ?」

 ヤツィータの言葉に、俺の動きと思考が止まった。
 この世界での戦いは終わった。それは確か。けど、その後は? まだ重大な事項が一つ、残っているじゃないか!

 ──早う目覚めねば“間に合わなくなる”ぞ?

 目覚める直前、最後に聴こえた『調和』の言葉が思い出される。あれは、そう、本当にそのままの意味だったのか。それに思い至った以上、ぐずぐずしていられない。すぐに支えの塔へ行かないと……。
 手段と方法を模索し、それに必要なメンバーを考える。
 だが、ベッドから起き出したところでクラリとした。……くそっ……まだ身体の動きが本調子じゃないか?

「ちょっと祐君。まだ無理しちゃ……」
「悪いヤツィータ、そうも言ってらんないんだわ。フィア、ナナシ、レーメ。悪いが手分けしてユーフォリアとミゥを捜してきてくれ。俺は校門のところで待ってる」

 俺の様子にナナシとレーメが事態に気付いたのか、ハッとした様子で、フィアは……説明していないのに、ただ一言「わかりました」とだけ言っくれて、保健室を駆け出て行く。
 そんな俺達の様子に、ヤツィータははぁと小さく溜息を吐いた。

「解ったわ。何かあるのね? ……まだ本調子じゃないでしょうから、無理だけはしないようにね?」
「……止めるか訊くかしないんだ?」
「あら、訊いたら教えてくれるの?」
「……あー……すまん。教えるのはやぶさかじゃないんだが、正直時間が無い」

 思わず口ごもった俺に、ヤツィータは「仕方ないなぁ」と言った感じで苦笑する。
 そんな彼女に「悪いな」と言って、まだ若干ふら付きそうになる身体を叱咤しながら、保健室を後にし──「ほら、捕まって」と、ヤツィータに支えられた。

「ヤツィータ?」
「校門まで行くんでしょ?」
「……ありがとう」

 ……暁 絶あかつき ぜつが理想幹に向けて放つ“滅び”の意思を乗せた意念の光は跳ね返されて、この世界の『支えの塔』へと向かう。それが塔へ当たれば、間違いなく塔は崩壊。連鎖的に世界が壊れ、今回『光をもたらす者』を撃退した意味がなくなってしまう。
 恐らくもう、意念の光を放つこと自体を止めるのは間に合わないだろう。
 ……ならば、なんとしても……この世界に跳ね返ってくる意念の光を、防がなければならないんだ。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/09/07(金) 01:53:46|
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