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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

永遠神剣之章:34.到着、魔法の世界。

 『精霊の世界』を旅立ってから数日が経った。昨日のうちに既に『魔法の世界』には入っており、ものべーは現在街へ向けて飛行を続けている。

 そんな中、もうすぐ目的地に到着するとの報せを受けて、皆と共に世刻達の教室へ行き、窓から外を眺めていた。
 外は霧の様なものが立ち込めて視界が晴れず、逆に見えないせいか、皆のどんな世界なのかって言う期待感が高まっているようだ。

「でも、『魔法の世界』って言うからには、ボクの世界と同じようなところなんじゃないの?」

 そう言うルプトナに対して、タリアが「ところが、そうでもないのよ」と否定し、続いて言った斑鳩曰く、「別に魔法って言葉が、ファンタジー世界のお約束ってわけでもないでしょう?」とのことだ。
 その斑鳩の言葉が終わると同時にものべーが一声鳴き声を上げる。永峰が言うには、どうやら何か見つけたらしい。
 その直後、それは姿を現した。

「うお……」
「すげえ……」
「威風堂々とはこのことでしょうか……素晴らしいですね」

 周囲から感嘆の声が上がる。
 霧と雲海を抜けた先。俺達の前に姿を現した、蒼空に悠然と浮かぶそれは、中心に巨塔がそびえる、円状に街並みが広がる白銀の都市。

「あそこが、この『魔法の世界』の中心にして最大の都市、ザルツヴァイ。あの中心の塔は『支えの塔』って言うのよ」
「沙月先輩、あそこに行った事があるんですか?」

 街の説明をした斑鳩に問いかけた世刻に、彼女は笑みで返す。

「そりゃあるわよ。……ようこそ、旅団の本拠地へ」

 その間にもものべーは街へと近づき、それにともなって街の様子も見て取れてくる。
 やはりと言うか当然と言うか、純粋な自然はまるで無く、人工物特有の硬質な雰囲気が強い。今の今まで、正反対な『精霊の世界』に居た分、特にそう思うのだろう。自然が無いことにはルプトナが難色を示していたが。

「……高度に発展した科学は魔法と変わらない、何て月並みな表現があるけど、この世界はまさにそれだな」
「この世界を『魔法の世界』と呼ぶ理由は正にそれよ。納得した?」

 そう訊いてくる斑鳩へ頷いて返すと、彼女は満足そうな笑みを浮かべる。

「あ、それじゃあ早苗先生、全校生徒へ上陸の準備を伝えてください」
「大丈夫なんですか?」
「ええ、問題ありませんよ」

 あちらではヤツィータと椿先生の、そんなやり取りが行われて、椿先生が放送のために教室を出て行った。そして、それと同時にこの教室にいた一般生徒達が、喜びの声を上げる。……それも無理も無いか、今まで、新しい世界に着いてすぐ外に出れるなんて無かったもんな。

「沙月先輩、あの突き出ている先端辺りに降りればいいんですか?」
「ええ、あそこがドックみたいなものだから、よろしくね」
「はい。ものべー、お願いね

 永峰の言葉に応えて、ものべーがゆっくりとドックへと近づいていくにつれ、そこに人が4人立っているのが見え、その姿を見たタリアが「あっ……サレス様」と呟くと、バッと身を翻して教室から駆け出て行った。

「……眼が輝いてたな」
「あそこに居るサレスと言う人に会えたのが、よほど嬉しかったのでしょうね」
「あはは……」

 思わず漏れた俺の言葉にカティマが答え、斑鳩が苦笑する。

「……けっ、そんなに嬉しいもんかね」

 とはソルラスカの言葉。

「……大変だな、ソル。がんばれ」
「何をだよっ。おら、さっさと行くぞ!」
「……はいはい」

 そんなソルラスカの態度に斑鳩達と顔を見合わせ、再び互いに苦笑を浮かべて後に続いた。



……
………


 ものべーから出た途端、冷やりとした空気が肌を刺す。
 各所から「寒い」と言う声が聞こえ、ヤツィータが「風邪を引かないように気をつけなさいよ」と注意を促すと、皆慌てたように制服を整えていた。
 そんな中、不意に「ノゾム! 制服の前を開けるのだ!」と言う声が聞こえたのでそちらを見ると、世刻のレーメが、世刻の制服の首元を開けさせてそこからすぽっと入り込む所だった。
 そんな微笑ましい光景に思わず笑みが漏れ、他の皆もやはりそれを暖かな視線で見守っている。
 「バカ野郎、早く出ろ」とか「嫌だ!」とかの小さな言い争いの様を見守っていると、ふと視線を感じた。何かとても直ぐ側から。
 ……はぁ。しょうがない。
 制服の首元を少し大きめに開けてやる。……寒い。

「うむっ」
 よしよし、解っているな! と言わんばかりに頷いたレーメが、俺の右肩からそこへ潜り込んだ。次いでナナシが、澄ました顔をしながらもレーメに続く。そんな俺達を、フィアやミゥ達はくすくすと笑いながら見ており、その様子に気付いた斑鳩達もこちらを見て、あらあらと言っている。
 ……世刻と眼が合った。

 ──大変ですね。

 ──お前もな。

 その瞬間間違いなく、視線だけでそんな意思疎通が出来たと確信して止まない。
 そんな何とも混沌としてきた場を治める声がする。

「はいはい、騒ぐのはその辺にして。折角迎えに来てくれた方たちが、待ちくたびれちゃうわよ?」

 ヤツィータの言葉が終わるのとほぼ同時に、タリアが「先に行くわ」と駆け出し、ソルラスカが慌てて後を追っていった。それに続いて、俺達も迎えに来ていた四人の方へと向かう。
 そこに居たのは、二人の男性と二人の女性。その内の男女共に一人ずつ、頭から猫の様な耳が生えている。
 女性の方は、「女の子」と言った方がしっくりと来る年齢で、後ろで二つにまとめられた藤色の髪を風に揺らしながら、その髪よりもさらに深い紫色の瞳に期待の色を篭めて、こちらの様子をじっと見つめている。
 対する草色の髪の猫耳兄さんは、不機嫌そうな様子を隠すこと無く、睨みつけるようにこちらを見ている。……まぁ、こっちはとりあえず置いておこう。
 猫耳少女が、『旅団』の一員のナーヤ=トトカ・ナナフィだな。んで、猫耳兄さんの方が…………なんだっけ、ニーヤァだったか。自分の一族至上主義で、他を見下している様な人だった気がする。……ってことはもう一人の、青みがかった緑色の髪を三つ編みにした、メイド服に身を包んだ人間の女性が、ナーヤの付き人のフィロメーラさんで、最後の一人──眼鏡をかけて、長い濃緑の髪をポニーテールにした、白いローブ……いや、どちらかというとマントか。それに身を包んだ背の高い男性が……『旅団』のリーダーである、サレス=クォークス、か。
 そんな彼らの様子を見ていて、それにしても……、とふと思う。

「……緑色の髪の毛の比率高いのな」
「……着目するのはそこですか……?」

 フィアに突っ込まれた。だって気になったんだもの。
 そんなバカな会話をしている俺達を他所に、その場にナーヤの嬉しげな声が響いた。

「待っておったぞ、のぞむ!」

 花が咲いたような笑顔を浮かべ、ダッと駆け出した猫耳少女ナーヤは、勢いそのままに世刻の懐へと突進して抱きついた。その瞬間、世刻を見つめる視線が凍り、空気が固まり、一気に剣呑な雰囲気になる彼の周囲の女性陣。

「のぞむのぞむのぞむのぞむーー!!」
「うわっ! ちょ、離してくれ!」
「嫌じゃ! わらわはずっと待っておったのじゃ、もう離さぬぞ!」

 そんな世刻とナーヤのやり取りが続くほどに、周囲の女性陣の視線は鋭さを増していっている。怖ぇよ、あそこ。

「……うわっ……今あそこに近づきたくねえ」

 思わずそんな言葉が口から出たら、近くに居た森に全面的に賛同された。



……
………


 その後、俺達の所からはよく聞こえなかったが、世刻がナーヤとの会話の後、何を感じたのか彼女の頭を撫で、それを見た永峰と斑鳩とルプトナが大声を上げて止め、その声に驚いたナーヤが離れた隙に世刻と彼女の間に三人が割り込んで引き離すと言う怒涛の展開を経て、ナーヤに促されて俺達はサレス達の下へと向かう。
 彼らの元へ着くなり、「やれやれ、やっと話ができるか」と少々呆れた様子で言うサレス。そして彼は改めて世刻へと向き直ると、その口角を上げて一度世刻を見定めるように視線を動かす。

「初めまして。待っていたよ、世刻望君」
「……? どうして」
「俺の名前を知っている、か? 沙月から聴いていたからな」

 世刻の声を遮るように言葉を重ねるサレス。対して世刻はいい気はしなかったか、その表情を険しくしながらサレスを見やる。そんな彼を宥めるように「まあまあ」と軽く肩を叩いた斑鳩は、サレスの方へ歩み寄りながら破顔した。

「久しぶりね、サレス。ずいぶんと待たせちゃったかな?」
「いいや、よくやってくれた。頑張ったな」
「あん、もう。いい年なんだから、頭なんて撫でないでよ」

 そんな親しげなやり取りに、世刻が複雑そうな顔をしているのが見て取れた。
 後ろの方から眺めている俺にも判ったのだ、斑鳩がそれに気付かないはずもない。案の定、「あれ、望君。もしかして妬いちゃってるの?」何て嬉しそうに言いながら、世刻に詰め寄る斑鳩。

「可愛いなぁ、望君。安心して、サレスは私の兄みたいなものだから」

 そう言って彼の腕を抱き、それをみた永峰を始めとした女性陣がまた騒ぎ出している間に、ヤツィータがサレスの側へ近づき、何事か話している。あれは……現状の報告ってところか。
 と、ふとそのサレスとヤツィータの視線が俺に向いた。……俺も丁度彼らを見ていたために視線が合ったので、軽くぺこりと頭を下げておく。

「さて、そろそろ自己紹介をさせてもらおうか。名前ぐらいは確認しておきたいだろう? まずはそこにいる彼から。彼はニーヤァ=トトカ・ヴェラー。この街、ザルツヴァイの代表だ」

 そうしているうちに、どうやら話を先に進めることになったようだ。
 サレスがそう言って指したのは猫耳兄さん。彼は尊大と言う言葉がぴたりと当てはまるだろう態度でこちらを見ると、「ふんっ」と鼻を鳴らす。

「……まさか人間だとはな」

 その明らかに他者を見下した言い方に、周囲の皆も色めき出すが、……いきなり問題を起こすわけには行かないと、自重してくれたようである。
 そのままサレスの紹介は続いていく。

「そして次に彼女。突然君に抱きついたのが……」
「ナーヤじゃ。ナーヤ=トトカ・ナナフィじゃ。わらわも“一応”この街の代表ではあるが、あくまで“一応”じゃ。この街の代表はあくまで兄上であるから、間違えるでないぞ?」

 サレスの後を次いで、ナーヤが自ら名乗りを上げる。
 何もそんなに“一応”を強調しなくても……とは思うが、まぁ、これもきっと物事を円滑に進めるためってやつだろうか。
 恐らく同じ事を考えているのだろうか、他の多くの人達も苦笑を浮かべているのが見て取れる。

「ナーヤの側に居るのが、彼女の世話役でもあるフィロメーラだ」
「初めまして。ナーヤ様の付き人をさせていただいております、フィロメーラと申します。以後、お見知りおきを」

 スカートをそっと摘みながら優雅に一礼する彼女。その洗練された様子に、生徒達……特に男子生徒から、感嘆の声が上がった。気持ちは解る。
 そんな事を考えていたら、隣に立っていたフィアに不意にわき腹をつねられた。

「そして、私はサレス=クォークスという。よろしく、望」

 最後にサレスが名乗り、紹介を終える。
 そして、ナーヤがフィロメーラさんを促し、彼女の案内で学生達を都市部へと導いていく。阿川はさっそく彼女や街の風景を写真に収めていたが……好きだね、ほんと。
 これでこの場に残ったのは、神剣使いとニーヤァのみ。そのニーヤァも、さっさとこの場を離れていったが。

「……すまないな、のぞむ。兄上の態度には不快な思いをさせてしまった」
「いや、いいんだけど。なんであんな風なんだ?」
「あーあれなぁ……いわゆる、差別主義なんだ」

 世刻の疑問にソルラスカが困った顔で答える。旅団メンバーですら、やはり色々と言われてるのだろうか。

「そうだな、いささかそういう部分はあるが、この国の世情を考えれば、仕方の無いことだ」
「兄上はそういう主義主張が強すぎてな。……さて、このままここで話し込んでいては、風邪を引いてしまう。わらわに着いてまいれ」

 サレスの言葉に頷いたナーヤに促され、俺達は『塔』の中へと向かった。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/08/02(木) 04:44:17|
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