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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase20:「情報」

 自分のステータス──【称号】や【スキル】──の更新を確認した後は、実際に身に着けた『フィールド・アナライズ』の効果を確かめてみる事にし、扉から迷宮へと出る。

 通路に出ると、周囲の警戒をフェイトに頼み、何となく使い方の解る【スキル】を発動させるべく意識を集中させる。
 きっと慣れればこんな改まったやり方じゃなくとも普通に使えるんだろうけど、やはり最初は意識しながらしっかりと。

「『フィールド・アナライズ』」

 発動のトリガーであるスキル名を唱えると、若干のタイムラグの後、俺の眼前に30センチ四方程度のウィンドウが出現した。
 その中では、恐らく通路を表しているのだろう、5ミリ四方ぐらいの正方形が並んで地図を形作り、そのうちの一つに青い光が点っている。

「この光ってるのが私たちかな?」

 俺の横からウィンドウを覗き込んでいたフェイトが、その青い光を指して言う。
 俺はそれに「多分な」と答え、次いで青い光の下にある、扉のマークを指した。

「ってことは、この扉のマークが『マイルーム』か」
「だね。そしてこの……ここから右上にある、下向きの三角が階段かな?」

 つつっと青い光から、恐らく実際の道順を思い出しているのだろう、少し考えながら右上に指を動かすフェイト。
 そんな風に二人で地図を見ながらうんうんと頷き合って、これなら充分に使えると判断する。
 通路を表す四角のうち、壁と思われる部分は線が太くなっているので、分かれ道を見落とすこともないだろうし。
 ま、それもこれもこのスキルによって表示されるマップを信用するのなら、なんだけど……流石にそこまで疑っていては何も出来ないしな。
 『フィールド・アナライズ』の確認を終えた俺達は部屋の中へと戻る。
 中に入った際、フェイトが「そういえば」と声を上げて立ち止まった。

「どうした?」
「さっきのと、まだ使ってみてないけど『アナライズ』って、この世界の『魔法』なんだよね?」

 フェイトの言葉に先ほど見たスキルの説明を思い出し、確かに『解析魔法』って書いてあったな、と同意する。

「それを使えるようになったことで、そこの端末の情報に何か増えてないかなって思って」

 言われてなるほどと思い、端末の前に立った。
 この世界に対する情報がほとんどゼロと言っていい状態の俺達としては、どんな些細な事でもこの迷宮、ひいてはこの世界について知ることは確かに重要なことだ。
 ヴンッと小さな音を立ててウィンドウが開き、その中から『インフォメーション』を選ぶと、『魔法』と言う項目が増えていることに気付く。
 「どう?」と訊いてきたフェイトに、「フェイトの予想通り」と答えて『魔法』の項目名を読み上げながら選択。そこに表示された文を読み上げていく。

「魔法とは──」


 魔法とは『神』や『竜』、『精霊』といった『世界に近しいもの』の力を借りて超常なる現象を起こす術である。
 魔法の発動に必要なものは2つ。
 一つは『魔法名』。スキル名とも称されるこれは、発現される魔法の効果を決定付ける非常に重要な要素である。
 これは『スキル名』と言う前述の表記からも解るように、その名を知っていれば誰にでも使えるというわけではない。我々が魔法を使用するためには『マナ・クリスタル』に術式を封じ込め、その後に改めて解放、吸収することによりスキルとして習得するか、『記憶の水晶』による先人よりの継承によって、スキルとして習得する必要がある。
 そして必要なもう一つ。それは『魔力』である。
 魔法が世界に影響を及ぼすために必要なエネルギーとなるのが『魔力』であり、『魔力』なくして魔法が発動することは有り得ない。
 この『魔力』には2種類が存在しており、1つは我々がその身の内に持つ『体内魔力オド』。そしてもう1つが世界そのものに満ちる『空間魔力マナ』である。とはいえ『体内魔力』は我々が『空間魔力』を呼吸──特に睡眠時の呼吸が最も効率的である──や食事と言った生命活動によって吸収、摂取し、それが体内に蓄積されたものであるため、厳密に言えば同じものであるのだが。
 今の説明の通り、この世界の大勢を占める『人族』や『獣人族』は、例外なくその身の内に『魔力』を宿しているが、その蓄積しておける魔力量は多くはない。
 常人であれば、魔法の発現に使用する魔力の全てを『体内魔力』のみによって賄おうとするならば、下位魔法を数度使用するのが限度であろう。
 歴史に名を残した大魔法使いや賢者と呼ばれる者達であっても中位魔法数発が限度と言われ、単発ならばともかく、上位魔法を連続で、体内魔力のみで使用できた人族、獣人族は有史以来存在しない。
 これはかの人族最高と謡われた『大賢者』や『魔法の申し子』、獣人族の『九尾の姫』においても例外ではない。
 尤も、彼、彼女らは上位魔法を一撃であれば『体内魔力』のみで放つ事が出来たと言われ、事実、前述の3名が一同に介した『静寂の砂漠』における『腐竜ザーランド』との戦いにおいて、『大賢者』が『雷帝』を、『魔法の申し子』が『炎獄』を、『九尾の姫』が『天墜』を使用したとの記録がある。
 また、その身体を魔力で構築された『魔造生物モンスター』や、『世界に近しいもの』である『精霊』に加護を受けた『精霊に愛されし者エルフ』であれば、人族や獣人族とは比べ物になら無いほどに豊富な『体内魔力』を有しているため、それのみでの魔法の発動も人族や獣人族に比べて遥かに容易である。
 ……話を戻そう。
 前述の通り『体内魔力』のみでは、直ぐにまともな魔法の行使も覚束なくなる。では、どうするのか? その答えが『空間魔力』である。
 すなわち、『体内魔力』を呼び水にして『空間魔力』を媒介にして魔法を発動するのである。これにより、『体内魔力』の消費量を可能な限り抑えて魔法を使用することが出来る。
 但し、『空間魔力』を媒介にする以上、『空間魔力』が無い、もしくは極端に薄い場所では魔法は発動しない、もしくはその威力が著しく減衰することになるので注意が必要だろう。
 その場合、『体内魔力』から消費を増やす事によってある程度の緩和は可能ではあるが、その分自身の消費も大きくなることは言うまでもない。
 また、『体内魔力』は呼び水に使うだけとは言え、魔法の扱いに熟達するまでは相応に消費する事を忘れてはならない。魔法を覚えたての初心者であれば、下位魔法を一度使っただけでもそれなりの疲労感を感じることであろう。
 故に決して慢心せず、遥か高みへ向けて精進していって欲しい。
 この記述が、汝の道行きを照らすしるべと成らん事を願う。


 長い説明文を読み終え、ふぅと一息吐いたところで、フェイトが「お疲れ様」と声を掛けて来た。
 それに「ありがと」と返して、とりあえず座ろうかと促してソファに戻り、向かい合わせに座り込んだ。
 今の説明文の中で色々と気になる単語やらがあるが、その中で一つ、俺の中で引っ掛かっている部分がある。
 一番最後の辺りの一文。『魔法を覚えたての初心者であれば、下位魔法を一度使っただけでもそれなりの疲労感を感じる』だったか。……けどなぁ。
 改めて先ほど『フィールド・アナライズ』を使った時のことを思い出してみても、あの時特に大きく消費したって感じはしなかったんだよな。考えられることはいくつかあるけど、恐らくはアレだろう。
 そんな事を考えていると、顔に出ていたか、フェイトが「葉月、何か気になることあった?」と声を掛けて来た。
 彼女に今しがた考えていた事を言うと、フェイトは「んー……」と小さく唸ったあと、

「考えられるとすると、葉月の“魔法の使い方”が上手いか、葉月の『体内魔力オド』が豊富にあるかのどっちかだけど……たぶん、後者だよね」

 そう言うフェイトに「多分なー」と答え、「原因ってさ……」と続けると、フェイトはこくりと一度頷いて、

「『リンカーコア』」

 俺とフェイトの声が重なった。
 やっぱりそれだよなぁと思いつつ、現状解っている範囲で『リンカーコア』が及ぼす影響をフェイトと共に考えてみる。
 まず、単純にそれがもたらす能力。
 周辺魔力を自身の魔力に変換することができる器官。これはすなわち、『リンカーコア』を持たない者よりも魔力の回復が容易だと言うことになるんじゃないだろうか。
 それと、魔法使用全般にボーナス。これは多分、この世界に来た事によって発現した効果なんだろう。
 そして『リンカーコア』の存在が前提条件になっている【称号】や【スキル】の存在。
 【称号】で言えば『魔導師』。【スキル】で言えば『ミッドチルダ魔法』だな。『魔導師』の付随ボーナスもそうだけど、なによりも『ミッドチルダ魔法』の存在は大きい。
 特に俺の場合、デバイスこそ無いものの、フェイトって言う師匠せんせいが居るぶん、魔法の習得なんかに大きなアドバンテージがあるのは確実なわけで。
 実際、今覚えてる3つも、フェイトが居なければ使えるようになるまでどれだけ掛かった事やら。
 ……こうして上げてみると、『リンカーコア』の効果が凄いな。しかもデメリットが思いつかないし。
 俺の保持魔力量がどれぐらいかは解らないけどな。

 そんな事を話しているうちに、不意にフェイトの身体を魔法陣が薄く包み込んだ。
 思わず2人揃って「あれ?」なんて声を上げ、慌ててフェイトの召喚時間を確認すれば、既に残り3分を切っていた。

「……えっと、時間が経つのは早いね」

 苦笑を浮かべるフェイトに「まったくだ」と返す。

「とりあえず、明日は地図を見ながら今日の続き……2階の奥の探索から初めて、出来れば3階もある程度見れるといいかな?」
「そうだね。葉月、効率は上がるだろうけど……」
「解ってる。無理はしない」

 そう言うと、フェイトはうん、と一つ頷いて、それとタイミングを同じくして、魔法陣が色合いを濃くした。
 流石に連日はあれかなと思い、今日はこれまで、また明日と告げようとしたところで、

「あの、葉月」

 言葉を発する直前にフェイトに先を越され、「どうした?」と促すと、

「えっと……待ってるから」

 遠慮がちに、恥ずかしそうに、上目遣いで言われてしまった。
 時間を見れば残り10秒程度。慌てて「また後で」と声を掛けると、嬉しそうにうん、と頷いてくれたのと時を同じくして、魔法陣と共にフェイトの姿が消えていった。
 ……何と言うか、あんな風に言われて断れるわけが無いよな。うん。仕方ない。
 やれやれと思う反面、ふと頬の緩んでいる自分を自覚して、思わず苦笑が漏れたのも仕方の無いことだろう。
 ……まぁ、フェイトと話してるのは楽しいからいいや。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/07/14(土) 21:12:40|
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