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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase12:「白骨」

 『深遠なる迷宮』第1層・洞窟エリア・3階。今日の探索もこの階である。

 昨日見つけた4階へ降りてもいいんだが、やはり引っ掛かるのはフェイトの召喚時間。
 今日も変わらず行った午前中のフェイトとの鍛錬の際に、3階に着くまでは俺一人で来て、3階からフェイトを召喚しようかと提案してみたが、「危ないし、心配だから」と却下されてしまった。
 流石に過保護じゃないか? と思ったけれど、せめてバリアジャケットをモノにするまでは、としゅんとされてしまっては折れるしかない。
 今日の感じからすると、もう少しで創れそうな気はするんだけどな。
 彼女達が使い、俺が今学んでいる魔法は、言うなれば学問の一。『魔法と言う名の技術体系』であり、しっかりと理論立てて学んだ方が習得は早いのだとか。特に物理や数学といった、理系に強い方が良いらしい。
 ……いやまぁ、俺は感覚的に身に着けようとしているし、実際それでも大丈夫らしいのだが。
 とまれ、心配してくれるのは有りがたく、嬉しいことなので、お礼を言ったら笑ってくれたのでほっと一息というところか。
 そんな訳で、今回は4階への階段までのルートで、短縮できそうなところは無いか、と言うのを含めての探索となった訳だ。
 そうして、前回通っていないはずの道を選んで進むこと五分ほど。前方の通路から近づいてくる気配と羽音。
 フェイトと共に武器を構えると同時に通路の先に姿を現したのは、カエルが2匹と蝙蝠が1匹。

「モンスターの混成部隊か」
「モンスター同士で戦ったりは……しないのかな?」

 フェイトの疑問には俺も首を捻る。
 動物の形をしている以上、そういった関係性──食物連鎖的な上下関係だ──は何がしかあるに違いないと思っていたからだ。

「……まぁ、今居るのはカエルと蝙蝠だけだし、ネズミ辺りだったらモンスター相手でも襲い掛かりそうな気がするな」

 何となくそんな気がする、と言う俺に対し、フェイトも苦笑を浮かべながら「確かにそうかも」と一言。
 そんな事を言っているうちに、モンスター達は俺達の近くまで迫ってきていた。

「っと、やるぞ」
「うん」

 声を掛け合い、敵に向かって駆け出す俺に対し、フェイトは後ろで待機。
 自然と敵の狙いは俺に向かう事になり──ほぼ同時に俺に対して、先端の硬くなった、鈍器のような舌を伸ばしてくる2匹のカエル。
 その片方を左にステップを踏んで躱し、もう片方を盾で防ぐ。
 盾越しに腕に響く衝撃に僅かに顔をしかめつつ、更に前に踏み込む。
 そこに上空から襲い掛かってくる蝙蝠……だったが、その進行方向を塞ぐように一瞬浮かんだ魔法陣。
 その魔法陣があった場所を蝙蝠が通った瞬間、蝙蝠の胴体を覆うように、パチリッと小さく雷光を発する黄金色のキューブが拘束し、蝙蝠の身体を空中に固定させた。
 フェイトによる拘束魔法──ライトニングバインドか。動きを止められたのが蝙蝠だけなのは、カエル2匹は俺の役目って言う無言の指示だろう。
 バインドによってもがく事しか出来なくなった蝙蝠は放置し、更に一歩踏み込んだところで、再びカエルからの攻撃。それを右前方へ姿勢を低くして躱す。
 顔の横を舌が過ぎ、巻き起こされた風圧が頬を掠める。
 そのまま一気に2匹のカエルのうち、向かって右側の方へと肉薄すると、引き戻された舌が3度伸ばされるよりも早く、その脳天にショートソードを突き立てた。
 カエルはビクリと一度痙攣すると、そのままざらりと金の粒子へと還っていく。
 それを見届ける間もなく、ちらりと視線を向けた先から感じる悪寒。
 その感覚に逆らわず、転がるように身体を投げ出した俺の視界に映ったのは、つい今しがたまで俺の頭があったところを貫くもう1匹のカエルの舌。
 下方から上方へ放たれた逸れは、俺の頭と言う標的を失って虚空を薙ぎ──ごしゃり、と鈍い音を立て、偶然その先に居た、空中に固定されたままの蝙蝠の脳天を叩き潰した。
 ……スプラッタである。
 その直後、本能か、それともそういう仕組みなのか、カエルの舌は魔力に変わり行く蝙蝠の死骸に吸い付くように絡みつき──フェイトのバインドが解けていないせいか、己の口中に引き寄せる事もできずに、まるで蝙蝠とカエルを繋ぐ橋のごとく、ぴんと張ったまま動きを止めた。
 ……この展開は流石に予想外だ。実際カエルも予想外で混乱しているのか、必死に引き戻そうとしているのか、もがくカエル。舌を離せばいいものを。
 とりあえず、このなんとも間抜けなカエルに引導を渡してやったところで、フェイトが「こんなこともあるんだね」と苦笑を浮かべながら言うと、俺はカエルが残した薄青色の魔結石と、蝙蝠の残した薄緑色の魔結石をポーチを通してアイテムボックスへと放り込みつつ、「まったくだな」と同じく苦笑を浮かべながら返した。
 クスリと、視線の合ったフェイトと小さく笑い合い、気を取り直して俺達は再度探索へと足を向ける。
 ちなみに『インフォメーション』によると、この魔結石の色は属性を現しているらしい。すなわち、ネズミが出す黄色の魔結石は地属性、青色は水属性、緑色は風属性であり、まだ見ぬ色ではあるが、赤色は火属性、白色は光属性、黒色は闇属性であるらしい。
 この属性……恐らくはアイテムボックスの機能の一つである『合成』に関係してるんだろうけど……そろそろ一度、その辺の機能をしっかりと把握しておくべきかな。
 例えば、剣と魔結石を『合成』して魔法剣とか……って、そう単純にはいかないか。



……



 それから幾度かの戦闘を繰り返しつつ探索を続ける事、約1時間。
 2階と3階を結ぶルート周辺の探索を粗方終え、多少の短縮は出来そうだという結論に達した。
 その後、帰りのことを考えて約30分ほどではあるが、やはり今のうちに一度4階の様子を見てみようと言う話になり、試しに降りてみることにした。
 相変わらず並んで降りるに不自由しない程度の広さの階段を、フェイトと肩を並べて降りることしばし。4階に着いた直後の部屋は、上の階と同じような、5メートル四方程度の小さな広間。違いとしては、この階は前方と左右の三方向に通路が伸びていることだろうか。

「さて、どこに行く?」
「ん……それじゃ、右かな」

 フェイトならどれを選ぶ? と訊いてみた俺に対し、右の通路を示したフェイト。
 じゃあそうしようと歩きつつ、どうして右? と訊いてみれば、2階は左、3階は正面だったから、と言う単純な答えが返ってくる。
 ……いやまぁ、俺が選んだとしても同じように選んだと思うけどな。
 それから5分程、分かれ道も曲がり角もない通路を警戒しつつ進む俺達だったが、不意に聞こえたカシ、と言う乾いた音に同時に足を止める。
 フェイトと視線を合わせると、こくりと頷いてバルディッシュを構えるフェイト。
 それと同時に俺も武器を構えたところで、前方の通路から、カシ、カシ、と一定の間隔で乾いた音が徐々に近づいてくる。

(足音……かな?)
(そんな気がするけど……何ていうか、変な音だな。まるで乾いた木か石を地面に打ち付けてるような──)

 念話でフェイトと会話を交わしつつ、今まで聞いたことの無いその音に高まる緊張。
 そして前方の暗がりより、ソレ・・は姿を現した。
 ボロボロの衣類を纏い、錆びた剣を右手にぶら下げ、割れた盾を左手に構えた、白骨死体。
 スケルトンってやつだろう。ゲームやファンタジー系の物語では定番の、アンデッドモンスター。
 それは解る。解るんだ。けどな……。

「──っ」

 隣でフェイトが息を呑む。
 俺も思わず上げそうになった声を飲み込み、下がりそうになる足を無理矢理押さえて武器を持つ手に力を篭める。この程度で済んでいるのは、『戦場の心得』のスキル効果のお陰に違いない。
 何ていうか、正直言ってこれ、メチャクチャ怖え。だって白骨死体が動いてるんですよ。
 薄暗い洞窟の中、錆びた剣を片手に彷徨う白骨死体とか、どんなホラーだよ。
 そんな事を考えながらふとフェイトの様子を伺ってみると、そこに浮かぶ表情は、今までにない緊張を孕んだ硬い表情。

(……最近、アリサ……友達が貸してくれた映画の中にこういうのが有ったんだけど……実際に見ると、その、なんていうか凄いね)

 案外フェイトはホラー系の事前知識がなくて平気なんじゃないかと思ったんだが、どうやらそうもいかなかったようである。
 フェイトの念話にまったくだな、と返し──確かに怖くて不気味だが、あれも所詮はモンスター……のはずだ。それにこの先、ゾンビだとかゴーストだとかも出る可能性だって有るんだ。その時に一々怖がってもいられない。
 そんな風に自身に言い聞かせ、フェイトの顔をちらりと見ると、こちらを見ていたらしい彼女と目が合った。
 それだけで、ふと自分の心が先ほどまでようりも楽になっていることに気付く。
 ……うん、大丈夫だ。やれる。
 こくりと一度頷き合って、フェイトよりも一歩前に出ると、それに応じてか、スケルトンはだらんと持っていた錆びた剣を構え、おもむろにこちらに向けてカシャッカシャッと乾いた足音を上げて駆けて来る。
 対する俺もまた、ふっと一度息を吐き、スケルトンへ向かって駆け出した。
 瞬時に詰まる彼我の距離。
 射程圏に入った瞬間、振り上げた剣を左上から斬り下ろしてくるスケルトン。
 初めての人型の敵による、武器を使った攻撃。
 とは言え人型である以上、俺としては他のモンスターよりもむしろやりやすい。何といってもその場合、俺が比べる相手は毎朝相手をしてくれているフェイトなんだから。
 そのフェイトよりも格段に遅い攻撃を避けられない道理はない。
 俺はスケルトンの剣を左下へ姿勢を低くするように踏み込んで躱すと、剣を振り下ろし、体勢の崩れたスケルトンの右肩口へショートソードを叩き込んだ。
 思い切り叩き込んだ一撃だったが、流石にこの剣じゃ斬り落とすというわけにはいかないらしい。とは言え体勢の崩れていたところに当たった斬撃によって倒れ、地面に叩き付けられて乾いた音を響かせるスケルトン。
 だが流石にアンデッドモンスターとでも言うべきか。当然ながら痛みを感じる様子もなく、倒れながらに無造作に剣を横薙ぎにしてきた。
 後ろに下がる間合いは無いと判断し、上に跳んでそれを躱す。
 足のすぐ下を過ぎる風切り音。
 着地した俺は、追撃が入る前に下がるかどうか一瞬迷ったが、選んだのは攻撃……とは言え倒れたスケルトンに入れられる攻撃の種類なんて、大して無いんだが。
 今の武器では、倒れた相手を掬い上げるように斬り上げるには不向き。骨相手に刺突は効果が薄い。となるとやる事は一つとばかりに、俺は足元にあった頭蓋骨を、渾身の力を篭めて思い切り蹴り飛ばした。
 格闘における“蹴り”と言うよりも、サッカーボールをシュートする感じとでも言おうか。……いや、確かにまともな攻撃とは言えないかもしれないが、日本の高校生が地面付近にあるボール大の大きさのものを蹴ろうとしたら、十中八九はこうなるって。
 とは言えクリーンヒットした蹴撃は、頚椎の折れる音を響かせて頭蓋骨を吹き飛ばした。
 吹っ飛んだ勢いそのままに、壁面に叩き付けられ、割れて砕けながら跳ね返った頭蓋骨は、空中で魔力に還って消えうせた。
 その瞬間、ピタリとその動きを止めたスケルトンの胴体もまた、ザラリと崩れるように金の粒子と成り果てる。
 返す刃で横薙ぎにしようとしていたのだろう、倒れた姿勢のままに振りかぶられていた右腕も粒子に変わり、カラン、と音を立てて錆びた剣が地面に落ちた。
 一方で割れていた盾やボロボロの衣服は、スケルトンと共に魔力に還っている。
 ……この錆びた剣はドロップアイテムだろうか。
 それを拾い上げ、ポーチの中へ──アイテムボックスに直結しているとはいえ、明らかに入らなさそうなところに入っていく様はなんとも奇妙である──仕舞ったところで、フェイトが「お疲れ様」と声を掛けて来た。
 はい、と差し出された彼女の手には、スケルトンが落としたのだろう、黒色の魔結石。「ありがとう」と返しながらそれを受け取ったところで、フェイトとほぼ同時にふぅ、と一つ息を吐いていた。
 お互いにそれに気付いて、再びほぼ同時にくすりと笑い合う。

「何て言うか、今までで一番インパクトのある敵だったな」
「そうだね。けど葉月、全然大丈夫そうだったね?」
「まぁ、隣にフェイトが居たからね」

 俺にとってこれ以上心強いものは無いから。そう続けると、若干照れた様子を見せながら、「ありがとう」と返してくるフェイト。
 その様子に癒されつつ、「戦いの方はどうだった?」と訊いてみたところ、返って来た言葉は「危なげ無くて、良かったと思う」とのこと。

「それもこれも、フェイトが訓練付けてくれるおかげだけどな」
「ふふっ、だったら嬉しいかな」

 その言葉通り、嬉しそうな微笑を浮かべるフェイト。そんな彼女を見てると、俺まで嬉しくなってくるじゃないか、なんて思いつつ、「それじゃ、行こうか」と声を掛けて、再び4階の様子見に移った。
 その後、約20分の探索の間にスケルトンとの戦闘を二回ほど行い、「マイルーム」への帰路に着く。
 4階について解ったのは、とりあえず1階から3階までの敵が出るのかどうかは不明だが、少なくともスケルトンが増えていること。
 出会ったスケルトンは、どれも錆びた剣に半ば壊れた盾を持っていた。魔結石は黒色。剣をドロップしたのは最初の1体だけだったが、まだ戦ったのが3体だけなので、どれぐらいの確率で残すのかは解らない。
 そして恐らく、弱点は頭部。後から遭遇した2体とも、頭を破壊したとたんに魔力に変わったためだ。
 ちなみにやはりと言うか、斬撃よりも打撃の方が、骨相手には効果が高いようである。……そろそろ武器を買い換えるべきかなぁ。とは言え所持スキルから言っても、武器は剣を選びたいところだが。
 とりあえずフェイトと共に下した総評としては、現状なら4階でもやっていけそう、と言うものであり、ネックになるのがやはり時間、と言うことになる。
 うん、頑張ってバリアジャケットをモノにしたいと思います。あとは……『ショップ』に何か良いアイテムが無いか見てみるか。
 そう結論付けたところで、本日の探索は終了である。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/07/12(木) 02:04:31|
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