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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase2:「把握」

 ……目が覚めた。

 視界に写るのは見慣れた部屋の天井じゃなく、ゴツゴツとした岩がむき出しの天井。
 …………はぁ、夢じゃない、か。
 溜め息を吐きつつ、解っていたことだけども、と独り言ちてから体を起こす。
 幾分気分がスッキリした。……って、あー……制服のまま寝たもんだから思い切り皺になってるな……はぁ。
 まったく、溜め息ばかりだ。
 とりあえずサッパリしてくるか……と、バスルームへと向かった。どうやら『魔導力式』のシャワーもあるらしい。魔導力って何だろうとは思うが……名前から察するに魔法の力ってやつだろうか。


 ……さて。
 サッパリしたところで、次に決めるのは今後の事、か。
 最終目標は、この迷宮を攻略して元の世界に帰ること。もしかしたら誰か一人が攻略すれば全員が帰れるかもしれないが……余り楽観視しないほうがいいか。下手をすれば誰も攻略に乗り出さない……なんてことになりかねない以上、攻略した人だけが帰れる、と考えていた方が自然だもんな。
 とまれ、方針としては、“命を大事に”。これしかない。死んじゃったら元も個も無いわけで。
 「書き込まれた」情報によると、この世界は剣と魔法と魔物がはびこるファンタジーのようだし。……俺に戦いとか出来るんだろうか。
 そう思いながらとりあえずアイテムボックスを開け、そこに入っていた小さなポーチを取り出す。
 どうやらこれはこのアイテムボックスと直結しているらしく、このポーチを通じてアイテムボックスの中身を出し入れできるらしい。魔法ってすげえな。
 ……って言うか、この「知らないはずの情報を知っている」って感覚が凄く気持ち悪い。そのうち慣れる……とは思うんだけど。
 次いで、出入り口横の端末の前に立った。
 それに反応してか、ブンッと電子音のような音を立てて起動する端末。……タッチパネルのようだ。実はこれ、魔法じゃなくて高次元に行き着いた科学なんだって言われても違和感は無いよな。そういえばどこかで、行き過ぎた科学は魔法と変わらない……みたいな表現を見たことが歩きがする。……そんなどうでもいい感想が浮かぶ中、ディスプレイに目を向ける。
 そこに表示されているのは、数行の文字の羅列。
 上から『ステータス』、『アイテムボックス』、『ショップ』、『コミュニティ』、『インフォメーション』とある。
 見たことも無い文字のはずなのに何故か読めるそれらの中から、とりあえず『ステータス』を選択。


◇◆◇

【プレイヤー名】
 長月 葉月 [Hazuki Nagatsuki]

【称号】
『第三次召喚者』:異世界から召喚された『深遠なる迷宮』第三次攻略者。出身世界は『地球』。

【ユニークスキル】
『キャラクター召喚・Lv1』
 :術者の知る創作物のキャラクターを召喚することができる。連続召喚時間は最大3時間。送還後、召喚していた時間と同時間のスキル使用不能時間ディレイが発生する。
  召喚可能キャラクター
  『フェイト・テスタロッサ』

【スキル】
『アーサリア言語』:迷宮の王より付与された初期スキル。パッシブ。この世界の言語を使用することができる。

◇◆◇


 ……『筋力』やら『知力』やらが数値化されていないだけまだマシだけど、まるでゲームだな。
 画面の一番上に小さく注釈がついていたんだが、どうやらこのステータス画面は「ステータスオープン」と発声すれば、迷宮内のどこでも表示可能らしい。
 っていうか出身世界『地球』って、大雑把過ぎるだろ。
 そんな感想と共に思ったのは、俺が選んだユニークスキルってこんなんだったか、と言うものだった。
 それに、この知らないはずの文字が読めたのは、最後にある『アーサリア言語』とか言うスキルのせいか。……果たしてこの『アーサリア』ってのは、世界名なのか大陸名なのか国名なのか。
 ……色々思うところはあるが、とりあえずそれはおいといて、先に他の項目の確認だな。
 そう自分に言い聞かせ、前の画面に戻って順番にメニューを見ていく。
 『アイテムボックス』から行えるのは、中のアイテムの確認と、『分解』、『合成』。
 『分解』は選んだアイテムを『魔力』に変換するらしい。
 『合成』は、別々のアイテムを一つにして新しいアイテムを作り出す。それを行うには『魔力』が必要、と。『魔力』はこの他にも、この部屋の機能の維持にも必要だとか。
 で、『魔力』を得るには先の『分解』しかなく、迷宮内に出現するモンスターから得られる『魔結石』やモンスターの部位素材から多くの『魔力』が得られる……つまり、生きるためには戦え、と言うことか。
 次に『ショップ』。
 これは文字通り買い物ができるみたいで、日用品や食料品から武器防具まで何でも買えるようだ。
 ただし、買うために支払うのはお金じゃなく、先に上げた『魔力』である、と。
 次の『コミュニティ』。これは今は見れなかった。
 選んだところ「この項目は現在使用できません」と出やがった。字面から察するに、恐らくは他の『プレイヤー』との交流用だと思うが。
 そして最後の『インフォメーション』。
 これは文字通り各種情報。先の『魔力』に関する情報もこれで見た。
 他に迷宮の簡易情報や戦ったモンスターの情報なんかが見れるみたいだ。
 今見れる迷宮の情報としては、俺がこれから挑まなければいけないのは、迷宮第一層『洞窟エリア』で、全10階層で構成され、10階にはボスが居る、と言うことぐらいか。
 さて、次は……武器の調達か。
 迷宮内にモンスターが出る以上、戦う手段は必要だ。
 『ショップ』の項目の中から『購入』、『武器』と選ぶ。現在マイルームにプールされている魔力量は4,863。これが多いのか少ないのかはわからないが。切の良い数字じゃないのは、多分一日経ってることと、さっきシャワーを浴びたからだろうか。
 さて……武器の種類は……無難に剣かな。
 安全面を考えるなら、遠距離から攻撃できる武器がいいんだろうが……弓矢とか、それこそ素人には無理な気がする。クロスボウでも有れば別なんだろうけど。
 そう思って、『ソード』の項目を選択。
 ずらっと並ぶリストを見ていくと、全体的に高い気がする。一番安い『ブロンズショートソード』で必要魔力が1,000ポイントか。
 しばし迷いながらも、買うものを決定していく。
 購入した物品はアイテムボックスに入るようだ。試しにと思い、腰につけたポーチから取り出してみると、大きさの如何に関わらず出し入れできるようである。便利。
 購入したものは以下。
 アイアンショートソード:鉄製の刃渡り30センチ程度の剣。1,500ポイント。
 バックラー:裏側に持ち手のついた、直径30センチ程の円形の盾。木製。500ポイント。
 マイナーヒールポーション:飲めば体力回復、掛ければ傷の治療に使える液体の回復薬。効果小。250ポイントが2つ。
 他に着替えとか色々200ポイント分。
 以上、締めて2,700ポイント。
 他に生活費需品や食料品なんかも買わねばならない事を考えると、とりあえずこれ以上は使いたくない。一回の探索でどれぐらい魔力を回復できるかわからないのだし。
 さて、それじゃあいよいよ、今後の探索の鍵となるだろうユニークスキルをば。
 まぁ、こんなスキルをゲットしていることから解るように、アニメやゲームやらは俺も好きなわけで……本来ならワクワクするところなんだろうが、今は正直気乗りがしない。
 だってそうだろ? 俺自身、いきなりこんなところに召喚されて、迷宮に挑まされる状況に追いやられてるというのに、その俺が取得したスキルが、自分が生きるために関係ない相手を召喚して戦ってもらうスキルなんだから。
 一番の疑問は、果たしてこの『キャラクター召喚』は、創作物の人物を“創りだして”呼び出す能力なのか、それともその創作物の“世界”があって、そこからその人物を呼び出すのか、どちらかと言うことだろうか。
 ……そう思ったところで、考えるまでもないかと思い直す。
 これから呼ぶ相手が一人の人間である以上、例え実際がどちらであろうと俺がやることに代わりはない。協力してもらえるように、誠心誠意頼むだけ。
 ……駄目なら諦めて一人で攻略するしかないな。
 使い方は……大丈夫、解る。
 相変わらず「知らないけど知っている」状態だが、今更だな。
 では、いざ。
 覚悟を決めて、俺はその場に手をかざし、脳裏に刻まれた情報に沿って、言葉を発した。……まぁ、召喚したい人の名を呼ぶだけみたいだが。

「『召喚サモン:フェイト・テスタロッサ』」

 俺の言葉が終わると同時に、かざした手の先に現れる人ひとりが入るぐらいの大きさの、球状の魔法陣。
 思わず「おお」と感嘆の声が漏れる。
 そして次の瞬間──魔法陣がカシャンッと音を立てて砕け──俺の眼前には、綺麗な金の髪をツインテールにした、黒色のワンピースを着た10歳ぐらいの少女が居た。
 紛れも無い──あのフェイトだ。うむ、美少女である。
 彼女は現れた直後、一瞬途惑った表情を浮かべたあと、少し周囲を見回し、その視線を俺に向けて、「あの……」と声を掛けて来た。
 って、呼び出しといてぼうっとしてどうするよ俺。しっかりしろ。

「あ、ごめん。えっと……はじめまして。俺の名前は長月ながつき 葉月はづき。行き成り呼び出して申し訳ないんだけど、話を聞いてもらえないかな?」

 そう言って頭を下げた俺に対し、「あ、あの、頭をあげてください」と慌てた様子で言う彼女は、その丹精な顔にふっと微笑みを浮かべた。
 不意打ちの表情にドキッとする。落ち着け俺、相手は推定10歳……9歳だったか? とにかく俺の半分程度の年の子だ。

「私はフェイト。時空管理局嘱託魔導師の、フェイト・テスタロッサです。……とりあえず、話を聞かせてもらえますか?」

 少しだけ戸惑ったような表情を浮かべてそう言う彼女へ、俺は自分の状況を説明していく。
 『迷宮の王ゲームマスター』とやらにこの世界に召喚されたこと。
 『深遠なる迷宮』と言うらしいこの迷宮を攻略しなければ、元の世界に戻れないらしいこと。
 召喚された時に、ゲームマスターによって、『ユニークスキル』を与えられ、俺が手に入れたのは『召喚能力』であること。
 そして最後に、俺が手に入れた召喚能力の仕様──連続召喚時間やその後のディレイなんか──を説明した。

「正直、自分でも未だに混乱している部分もあるんだ。放り出された状況と、植えつけられた情報と、自分の現状にさ。それに俺自信は戦いとかそういったこととは無縁の生活してたから、今の自分がまともに戦えるとは思わない。けど、攻略しなきゃ帰れないって言うなら……攻略すれば、家族の元に帰ることができるなら、俺はそれを諦めたくなんて無い。だから、お願いします。力を貸してください」

 俺の説明を聞き終えた後、フェイトはその表情を真剣な物へと変えて、ひたと俺を見据えてくる。
 俺はその視線を逸らさないように正面から受け止め、彼女の次の言葉を待つ。
 どれだけの時間が経っただろうか。……いや、きっと幾許も経っていないんだろう、けど、俺にとっては凄く長い時間が過ぎた気がして。
 そして彼女は──

「……うん。私でよければ力になります。……一緒に頑張ろう?」

 もう一度その顔に微笑みを浮かべ、彼女の口から発せられたその言葉に、俺は大きく安堵の息を吐いた。
 彼女の中でどんな想いがあるのか、どんな考えから、そう言ってくれたのか、それは俺には窺い知ることはできないけれど……いつか訊いたら、教えてくれるだろうか。どうして俺に協力してくる気になったのかって。
 けど今は、先に言わなきゃいけない……いや、心から言いたい言葉を、言おう。

「ありがとう」

 まだたったの18年だけど、今まで生きてきた中でこの一言をここまで心を篭めて言えたのは、これが初めてだったに違いない。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/07/06(金) 22:11:55|
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