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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase94:「魔力」

 翌日、諸々の準備を整え、フェイト達と共に『第四層』に入る。今日のサブパートナーは咲夜だ。

「『プレイヤー』の中でも手練れのパーティが壊滅した所だから、入り口とは言え注意を怠らないようにな」
「はい。ですけど、功を焦って疲労困憊の中突っ込んだ結果ですから、あまり同情出来ませんね」

 念のため注意を促しておこうと皆に声を掛けると、咲夜から手厳しい言葉が返ってきた。とは言え、言ってることは尤もなんだよなぁ。
 この迷宮は、階層が変わると環境も敵の性質もガラリと変わる。である以上、新しい階層に挑む時は、少なくとも体調は万全にしておくべきだろう。
 それを考えると、確かに『神速』のパーティが取った行動は褒められたものではないと思う。
 ただ、少し疑問を上げるとするなら、『第三層』に至って『大侵攻』も乗り切る程の人が、そんな単純なことに思い至らなかったのか。もしくは思い至った上で強行したのか。強行したのだとしたら、なぜそんな行動を起こしたのか……ってところだろうか。

(ハヅキ、宜しいですか?)

 そんなようなことを考えていると、アルトリアが話しかけてきた。

(サクヤが言ったことは他人事ではありません。貴方も充分に気を付けてください。前にも言いましたが、貴方に何か有れば心配する者は大勢居るのですから)
「うん、ありがとう。気を付けるよ」

 アルトリアに言われたことは自分でも考えていたこととはいえ、改めて他人に言われると、余計に身が引き締まる思いがする。
 ……と、今度はフェイトに手を握られて、「本当に、気を付けてね?」と念を押された。
 フェイトには特に心配を掛けることが多かったしなぁ……。

「はい、気を付けます」
「うん、よろしい」

 これまでのことを振り返りつつ返事をすると、クスクスと笑いながら頷くフェイト。
 ……っと、和んでる場合じゃないな。「そろそろ行こうか」と皆を促し、『転移陣ポータル・ゲート』へと足を進めた。
 ちなみに、今回用意した『蓄魔石マナ・クリスタル』は、稲葉さん達五人と俺に、それぞれ五個ずつの計三十個。
 これが多いのか少ないのかは分からない。蓄魔石が稲葉さん達も使えたとして、蓄魔石一つでスキルが何回使えるかが解らないからだ。まぁ、今回はそれも含めての検証になるのだろうけど。
 加えて、念のため『ショップ』で装飾品アクセサリを見繕った物に、手持ちの素材を『合成』して出来たものが四つほど。
 一つは、状態異常に掛かる確率を軽減し、かつ掛かった状態異常の被害を軽減するとともに、若干の対魔法防御力を上昇させる『水霊の首飾りネックレス』が二つ。次に、所持者の対魔法防御力と魔力攻撃力を上昇させる、二個一対の『連理の耳飾りイヤリング』。そして最後に、雷属性の攻撃と耐性を高め、素早さを上昇させる『雷華の指輪』。
 このうち、『連理の耳飾り』はなのはに、『雷華の指輪』はフェイトに渡していて、『水霊の首飾り』の一つは恐らくはやてに持ってもらうことになる。
 性能というか、能力的に彼女達に持っていてもらいたいと思った……というのもあるが、『第四層』での戦いは彼女達がキーになる気がするのだ。……『腐竜ザーランド』の特徴や階層の特性を聞いた上で感じた、飽くまでも俺が戦うならの前提の予感だけど。



……



 『第四層』の『転移陣』は、砂漠の中に立つストーンサークルの中心に在った。
 現れたそこから周囲をぐるりと見渡せば、見えるのは砂の平原、砂の丘。一つの植物も存在していない。
 大地は乾き、水は無く、火は消え失せて、風は止む。光は昏く、闇は薄い。そこは正に、無の世界──『静寂の砂漠』だった。
 『転移陣』から出て、ストーンサークルの外へと向かう。
 実際に歩いてみると実感するが、砂に足を取られ、若干歩きにくい。……これ、『神速』の人はよく逃げ切れたな。フェイト達からも、「ちょっと歩き辛いね」なんて声が聞こえてくる。敵と戦う時は要注意だろう。
 ストーンサークルから出て、中から見回した時に見つけた稲葉さん達の所へと向かい、合流する。
 遠くには砂嵐が見える。……あそこに『腐竜ザーランド』が居るのか。
 挨拶を交わし、稲葉さん達それぞれに『蓄魔石』を渡すと、「こんなに用意してくれたのかい?」と言われた。

「とりあえず使えることを前提に考えて、一つで何回スキルが使えるのかも解らなかったので……とりあえずこれぐらい有れば良いかな、と」

 俺の説明に、なるほどと頷く稲葉さん達。そしてお礼と共に代価を払おうとしてくるが、別にいいですよと遠慮する。
 実際、素の『蓄魔石』は然程高いものでもなく、中に籠めている魔力も自前のもので『魔結石』を使用しているわけでもない。
 それよりも実際に使えるか実験してみましょうと促した。……まずは『蓄魔石』を使ったことが解り安いように、幾度かスキルを使って『体内魔力オド』を減らすところからかね。
 ちなみにその間、フェイト達にはこの階層で上手く動けるかどうかの確認をしておいてもらうことにした。



……



「これ、移動は飛んだ方が消耗しない気がする……」

 ポツリとなのはが言った。
 砂漠を徒歩で移動することによる体力の消耗などを鑑みての言葉だろう。
 その意見には全面的に同意したいところではあるのだけれど、やはり懸念されるのは『空間魔力マナ』が無いところで長時間飛ぶことによる影響か。
 それを告げると、「そのことなんだけど……」とフェイトが言う。

「実際に少し動いてみて思ったんだけど……多分、私となのはとはやて、それと……んー……葉月も、かな? あまり影響は受けないと思う」
「はぁ?! それって、どう言うことだい?」

 彼女の口から出てきた言葉に、聞いていた稲葉さん達からも驚きの声を上げる。
 そりゃそうだよな。俺も驚いている。
 フェイトに続きを促すと、彼女は言葉を探すように少し考え、

「解り易く言うと……使う魔法の、魔力運用方法の違い、かな?」
「魔力運用方法……と言うと、“この世界”で言えば『体内魔力』を媒介に『空間魔力』を使ってスキルを使っている……ってことか?」
「うん。この世界の魔法とかスキルと違って、基本的に私達の魔法は、身体の中に保有する魔力……この世界で言うなら『体内魔力』で行使されるの。保有魔力量が魔導師ランクの決定の一因になっていることからも解るように、保有魔力量が多ければ攻撃に転換できる魔力も、防御に回せる魔力も多くなる。継戦能力も高くなるでしょ?」
「なるほど。逆に言えば、この世界みたいに『体内魔力』をほとんど使わずに『空間魔力』を消費して魔法を使うことは無い。故に影響はほぼ無いと推測される、と」
「そういうこと」

 結論を述べると、フェイトが頷きつつ実際にフォトンスフィアを生成してフォトンランサーを一発射出。その行方を見送りながら「大気中に魔力が無いだけで、魔力運用を阻害されるっていうわけじゃないみたいだし」と続けると、そこで佐々木少年が「はい、先生!」と手を上げた。
 それに対して「せ、先生?」と戸惑いつつも、「何かな?」と話を促すフェイト。

「じゃあ『スターライトブレイカー』はどうなんだ? あれって確か大気中の魔力を集めて撃つ集束砲だったと思うんだけど……」
「スターライトブレイカーは、同じ“大気中の魔力”でもこの世界の形式とは違うんだよ」

 「ね?」とフェイトが同意を求めると、なのはが「うん」と頷いて、説明を引き継ぐ。

「わたしのスターライトブレイカー……集束砲は、大気中に散布された『魔法として使われなかった魔力』を集めてるの。えっと、例えば……わたしが十の魔力が必要な魔法を使う時に、十五の魔力で使っちゃうと、その際に余った五の魔力は、魔法として使われずに大気中にばらまかれる。このロス分はまず間違いなく、どうしても出ちゃうものなんだけど、それを集めて再利用するのが、わたしの集束砲なの」

 そう言って、「上手く説明できたかな?」と訊いてきたので、小さく手で丸を作ると「よかった」と笑うなのは。
 つまりは、彼女が使っているのは基本的にあくまでも自分の魔力ということで、この世界で言う『空間魔力』を直接使っている訳ではない。そのため戦闘開始直後にスターライトブレイカーを撃つことは出来ない。けれど、逆に戦闘時間が長引く程、集束できる魔力が増えるし、自分の魔力が減っていても撃つことが出来る、と。
 そこでふと気になったことが有ったので、「はい、フェイト先生」と手を上げる。

「も、もう、葉月ってば……何か気になること有った?」

 照れるフェイトの様子に和みつつ、その魔力運用なんだけど、と前置きし、

「魔法の行使に問題が無いことは解ったんだけど、魔力の回復は?」

 そう訊くと、「回復?」と小首を傾げられた。……あれ?

「……戦闘中とか、大気中の魔力をリンカーコアで取り込んで自分の魔力に変換したりしない? 急激な回復は無理だけど、応急処置的には結構やってるんだけど」

 特にアルトリアを召喚してる時だ。『英霊』というスペック的に仕方無いとはいえ、彼女の戦闘行動を支えるのは結構骨なので。
 そんなことを言うと、なのはは困惑したような、フェイトは驚いたような顔をしたあと、微苦笑を浮かべた。

「葉月ってば、そんなことしてたんだね……。多分だけど、それ、葉月だから出来るんだと思うよ? ……葉月と私達の出身世界……リンカーコアの成り立ちの違いかな……?」

 フェイトが言うには、リンカーコアは確かに大気中の魔力素を取り込んで自身の魔力に変換する機能があるけれど、その際に最も重要な要素となるのが『睡眠』なのだそうだ。
 つまり、俺がやっているような、戦闘中に周囲の『空間魔力』を取り込んで自身の魔力に変換する、何てことは、彼女達からすれば信じられないことだそうで……なんとまあ。
 ただそうなると、先程フェイトが「この階層で影響を受けにくい人」に俺も含めていたが、少し事情が変わってくる。
 少なくとも今までのように、不足した魔力を『空間魔力』で補うような戦い方は出来なくなる。幸いにもと言うべきか、自分の分の『蓄魔石』の数を揃えるのは容易なので、それで代替することは出来る。あとは、その手法の違いがどう影響するかだろう。

「要するに、今のうちに出来るだけ試して、しっかり準備するしかない……ってことか」
「うん、そうだね。“万が一”なんてことが無いように、頑張ろうね」

 結局のところ、そこに行き着くのである。


◇◆◇


 時間は少しだけ進み、『地球』は『日本』の関東地方、海鳴市。フェイトの部屋での一幕。
 ベッドの上に寝転び、右手を挙げて蛍光灯に掌をかざすフェイト。
 そこには何も変哲の無い、彼女にとっては普通の手がある。
 けれど“記憶”の中では、そこには確かに『葉月がくれたアクセサリゆびわ』が嵌まっていて。
 金色の、華の意匠があしらわれた綺麗な指輪だった。
 右手を下ろして左手を重ねて、胸に抱える。
 似合ってるね、と言ってくれて、嬉しかった。
 仰向けだった姿勢を半回転。横向きに。そのままもう一度半回転。うつ伏せに。枕に顔を押しつけた。
 次の戦いも力になろう。頑張ろう。そう決意を新たに、心は温かく。
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