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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase92:「一歩」

 はやてとリインフォースとの話が一段落したところで、残りの召還時間を使って、アルトリアと咲夜と顔合わせをしてもらうことにした。

 『連鎖召喚チェインサモン』で半減した後に、説明などで時間を使った後での『多重召喚マルチサモン』だから、時間としてはせいぜい二十分程度だけれど。
 それでもまぁ、とりあえずの顔合わせなので大丈夫だろう……と、そんな予想をしつつのはやてとアルトリア達のファーストコンタクトは、予想通りに特に問題も無く。時間が来るまで彼女達の語らいを見守っていた。
 やがて召喚時間も終わり、はやて達に合わせてフェイトとなのはも一度送還して一人になると、一瞬、痛いほどの静けさに包まれる。
 いつ頃からだろうか。この瞬間があまり好きではなくなったのは。
 多分……というか、間違いなく、彼女達が皆優しくて温かい人達だから、別れた後の静寂に寂しさを覚えるのだろうというのは、想像に難くない。
 ……我ながら贅沢なことだ、と苦笑が浮かび、頭を振ってそんな考えを追い出した。
 
 スキル使用不能時間ディレイが明けた三時間後。
 再度フェイトとなのは、はやてとリインフォースを喚び出す。次にやるのは、実際にはやてとリインフォースがユニゾンできるかどうかの実験だ。
 恐らく大丈夫だろうとは思うが、あくまでも「恐らく」で「だろう」である。何しろ、彼女達の世界ではリインフォースは既に夜天の書から離れ、消えてしまっているのだから。
 まぁ、その辺に関しては彼女達が一番よく解っているから、改めて言う必要はない。実際、「ユニゾンを試してみよう」と提案したときに、はやては「うん……そうやね」と、一度リインフォースの方を見てから頷くに留めた。
 その仕草も、声音も、リインフォースの事を気遣っている事が如実に感じられて、彼女もまたリインフォースが置かれている状況に思う所があるのだろうと察せられたから。
 ──結果としては、ユニゾンは成功した。
 それによって、今はやてが持つ夜天の書に何か不具合……例えば、折角切り離した自動防衛システムが復活したとか、そう言った事が起きたということもなく。
 「上手く行ってよかったね」と言うと「そうですね。安心しました」と笑顔を浮かべるはやて。

「折角だしこのまま実際に『迷宮』に出てみようか?」

 その提案に、はやては「あ、はい」と頷いた後少し思案し、「せやけど、最初は浅いところからお願いします」と言ってきた。
 ……その魔力量の多さや、“先の展開”を知っているために勘違いしそうになるけれど、はやてはつい先日魔法を使えるようになったばかりだ。
 初陣が『闇の書の闇』なんて規格外だったり、恐らくは夜天の書から某かのバックアップ等は受けているだろうとは思うけれど、それでも、戦闘経験で言えば俺の方が間違いなく多いだろう。……この言い方は適切では無いかもしれないけど、言うなれば「初心者」とも言える。
 フェイトとなのはに目配せすると、二人は「フォローは任せて」と頷いてくれた……とは言え、無理する必要はないよな。

「それじゃあ、この部屋から出た直ぐの所……第一層の一階から行ってみるか」
「はい。よろしゅうお願いします」

 ぺこりと頭を下げるはやてに「こちらこそよろしく」と返して、フェイト達を促して扉へ向かい──はやてが動いて居ないことに気付き、足を止めて振り返る。
 先程リインフォースと融合ユニゾンした際に、車椅子から立ち上がっていたはやて。
 考えてみれば彼女はその状態から動いていなくて……恐らく、先日の戦いの際は、ほとんどが飛んで行動していただろうし、なによりそんなことを気にしている状況でもなかっただろう。
 ──ああ、そうか。
 見るからに緊張した面持ちの彼女の側まで近づき、手を差し伸べると「……えっ」と小さく戸惑った声を漏らした。

「大丈夫」

 可能な限り穏やかに。安心してもらえるように、しっかりと告げて、手を取って。
 彼女に並び、促すように、足を踏み出して。
 一歩。
 釣られるように、はやてもまた足を踏み出した。
 もう一度、はやての方へと顔を向けて、「大丈夫だろ?」と微笑み掛けると、彼女は一瞬きょとんとした顔をしたあと、直ぐに破顔して頷いて……その頃には、反対側の手をなのはが取り、『マイルーム』から外へと通じる扉をフェイトが開けて、待っている。
 部屋の真ん中辺りから、扉まではほんの僅かな距離。けれど……それでも、はやてにとって「自らの足で歩いた」というこの距離の中に、どれほどの思いが詰まっているだろうか。

「……おおきにな、葉月さん」

 フェイトの待つ扉まで歩ききったはやては、小さくもはっきりと、朗らかな笑顔でそう言った。



……



 第一層をゆっくりと周りながら、はやての戦闘の感触と、このメンバーでの立ち回りなどを確かめていく。
 前を俺とフェイトが、その後ろをなのはとはやてが並び、次の階までの最短距離を進みながら、幾度かの戦闘を行っていく。
 そうして五階の『転移陣ポータル・ゲート』まで辿り付いたところで一度『マイルーム』へと戻り、休憩を兼ねて総括……と言うか感想というかを言い合った。
 とりあえず、満場一致の意見として、はやては完全に後衛型だなと言うこと。
 なのはも同じように後衛型……というか砲撃型というかだけれど、彼女の場合は真っ正面からのぶつかり合いにも応じたりできるのが違いか。殴り合い、と言ってもいいけど。……フェイトとかヴィータとか、実績があるんだよな。
 実際のところ、はやてがなのはのように動けるかどうかは未知数な部分が多いけれど、とにかくタイプ的には後衛……後方からの遠距離攻撃だね、と言うのは確定だ。
 なので、はやて召喚時のポジショニングとしては、俺が前衛で近接、フェイトも同じく前衛。場合によっては遊撃に回って臨機応変に。なのはとはやてが後衛から遠距離攻撃となる。
 ちなみにアルトリアの場合は、どう考えても彼女が前衛。俺とフェイトが中衛遊撃、なのはが後衛。咲夜の時は、俺とフェイトが前衛、咲夜が中衛、なのはが後衛……ってところか。
 フェイトがメインパートナーとなったので、常にフェイトとなのはが居ると考えられるのは大きいな。
 ……と、そうこうしているうちに召喚時間の限界が来たか、はやての周囲を球状魔法陣が薄らと取り巻いた。
 「もう時間みたいやね」と若干寂しげに言うはやてに「ああ、また後で」と返すと、直ぐに朗らかに笑ってうん、と頷くはやて。
 そのやりとりの最中に意識の裏で『メッセージ』が来たことを感じて、はやてとその傍らに浮くリインフォースが還ったのを見届けた後、フェイトとなのはに一言断ってから、届いたメッセージの内容を簡単にでも確認しようと『ステータスウィンドウ』を開き……って、次のはやての召還時間に合わせるのに、フェイト達も先に返した方が良いか。
 恐らく、その考えと共に、無意識にはやてのスキル使用不能時間ディレイタイムを思い浮かべたのだろう。脳裏に彼女のそれが浮かび上がり──

「……あれ?」
「どうしたの、葉月?」

 思わず声を上げてしまった俺に、フェイトが問いかけてくる。

「ああ、いや……はやてのディレイがさ、約九十分……一時間半なんだよ」
「あれ……? わたし達と同じなら、三時間ぐらいのはずだよね?」
「そうだな。『連鎖召喚』中はディレイの加算が倍になるから」

 前に説明したスキルの俺のスキルの仕様をちゃんと覚えていたのだろう、なのはが小首を傾げて訊いてきたので肯定すると、なのはとフェイトは顔を見合わせて「どういうことだろうね?」と疑問を浮かべた。

「この前……午前中の召喚の時は?」
「その時は確かに三時間ぐらいだった。確認もしたし」

 そう、その時は確かに三時間だった。フェイト達も返して、念のためそれぞれのディレイ時間を確認して、次の召喚時間が大きくずれていないことを確認したのだ。

「それじゃあ……前回と今回の差、多分、はやてとリインフォースさんに関わることかな?」
「一番大きいのは……二人の融合ユニゾンか」

 フェイトの挙げた確認事項に、恐らくこれだろうと思われるものを述べる。
 多分、リインフォースがはやてとユニゾンして一つになったことで、その瞬間から二人だけど一人分としてカウントされたのかな、と。
 そう述べると、「うん、何だかそんな気がする」と頷くフェイトとなのは。
 ……そうなると、今フェイト達を還すと、次にはやてが召喚可能になった時点でも、まだフェイト達はディレイ中……というか、次にはやてを召喚している間は召喚不可ってことになるんだよなぁ。
 ……いや、フェイトのディレイが終わるまで、はやての召喚を控えれば良いと言えばそれまでなんだけど……リインフォースのこともあるし、どうせなら直ぐにまたこちらに喚んであげたいと思うわけで。
 ……よし。

「じゃあ、フェイトとなのはは、今回は送還しないでこのまま居て貰っていいかな? それなら、次にはやてを召喚してからも一時間ぐらいは一緒に行動できるし」

 はやてより三十分強程早く時間が来る感じかな、とフェイト達の召喚可能時間とはやての召還時間を比べながら告げる。
 なのはが「うんっ」と頷き、フェイトも「もちろん良いよ」とはにかむと、隣に座っているフェイトがおもむろに、脱力するように寄りかかってきた。
 向かいに座っているなのはがそれを見て立ち上がると、詰めて詰めてとジェスチャー。
 このソファー二人掛けなんだけど……とはいえ二人とも身体は小さいから、三人座るのに支障はないからいいけれど、と思いつつ「ちょっとご免ね」とフェイトに断り位置をずらすと、空いた隙間に座って、フェイトと同じようにしてくるなのは。

「んで、二人とも急にどうした?」
「ん……何となく?」
「……葉月さんって、側に居ると何だか落ち着くから」
「ふむ……」

 まぁ、召喚者おれ被召喚者かのじょたちとの“絆”つながりもあるだろうし、そう言うものなんだろうか、と一応の納得をして……

(それに、先程までハヅキはハヤテを特に気に掛けていましたし、『迷宮』に行っている間もそうなのでしたら……恐らく二人とも、少し寂しかったのではないですか?)

 そんなアルトリアの補足が入り、ああそうかぁと納得したのと同時に、なのはがビクリと身体を跳ねさせてから両手で顔を覆って蹲った。

「……わすれてた……!」

 ……ああ。アルトリアの事が頭から抜けてたんですね。

 ちなみに、届いた『メッセージ』は稲葉さんからで、『第四層』に関しての情報があるから伝えたいとのことだった。あと、不用意に『第四層』に突っ込まないように、とも。……どうやら一筋縄では行かない場所らしい。
 彼等には、はやてとも顔を合わせておいてもらおうか、と言う訳で、後ほど話を聞かせて貰うことにした。
 ……さて、どんな内容が出てくることやら。
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  1. 2018/06/07(木) 02:54:16|
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