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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase91:「リインフォース」

 翌日。

 先にフェイトとなのはを喚んでから、いよいよはやてを喚び出す。
 慣れ親しんだ召喚の術式に応えて眼前に球状魔法陣が生成され、それが砕けるとともに、車椅子に乗った女の子──はやてが現れる。

「こんにちは」
「……あ、はい。こんにちは……? ……え、ええ? あれ、貴方はあの時の……って、なのはちゃんにフェイトちゃん?」

 流石に戸惑った様子を見せたはやては、すぐに俺の側に居る二人に気付いたらしく、戸惑いの中にも少しだけ安堵を見せた。
 さて、それじゃあ先ずは自己紹介から──

「俺は、『長月葉月』。いきなり喚び出して申し訳無いんだけど……話しを聞いてもらえないかな?」

 そんな前置きから、もう何度も行った状況説明を、フェイトとなのはの補足を受けながら話していき──この間の出来事……俺が『闇の書の闇』との戦いの最中に喚び出された後のことを話し終えたところで、息を吐く。

「なるほど……それで、今度は私を呼べるようになったんやね?」

 俺の話が一段落したからか、はやてがそのように問いかけてきた。

「せやけど……今の私はこんなん・・・・ですし、役に立てへんと思いますよ?」

 次いで申し訳なさそうに眉尻を下げ、自身が座る車椅子を指して言うはやて。
 ……さて、ここからが本題だ。
 「そのことなんだけど……」と前置きし、俺の召喚スキルについて説明する。

「俺のこの召喚スキルには、いくつか派生スキルが有ってね。その中に『連鎖召喚チェイン・サモン』っていうのが有るんだけど……その内容が、現在召喚中の相手に関係する人物を召喚するって言うのでさ」
「関係する、人……」
「そう。例えばここに居るなのはは、先にフェイトを喚んでから、フェイトの『連鎖召喚』で来て貰ってる。それで……この『連鎖召喚』で、はやて……君を通して喚べる人も、もう解っているんだ」

 もしかしたら、この時点で俺が何を言わんとしているのか気付いているのかもしれない。
 真剣な面持ちで耳を傾け、続きを促すように頷くはやて。

「……『リインフォース』」
「っ! ほんまに!? あの子にまた逢え……きゃあっ!?」

 俺が彼女・・の名を言った瞬間、目を見開き、次いで詰め寄るように身を乗り出してきて、危うく車椅子から落ちそうになったはやてを受け止めた。

「大丈夫? 落ち着いて」
「……済みません、おおきに」

 車椅子に戻したところで、落ち着く為だろう何度か深呼吸をするはやて。
 それが終わるのを見届けてから、「いくつか、聞いて欲しいことがある」と、昨日フェイト達にも言ったことを含めて話していく。

「まず、君を媒介に召喚する以上、十中八九は『君が知っているリインフォース』だとは思う。けど、もしかしたらそれ以外……例えば、『平行世界のリインフォース』である可能性もあること。
 次に、君が彼女に会えるのは、俺がこちらに喚んでいる間だけで、俺のスキルの制限上連日喚ぶことはできないのと、他にも協力してくれている人が居るんだけど、喚ぶのは皆との順番になるから……今なら、基本的に二日置きかな? それぐらいの間隔になること。
 そして最後に……いつになるかは解らないけど、いつか必ず、“別れ”が来ること」
「それは……うん、そうやね」

 出逢いがあれば、別れもある。それは決して逃れられないことだから──きっとそんな感じなのだろうか。それは仕方無い、と言うように頷いたはやてに、それだけじゃないんだと言葉を続ける。

「俺の目的は、元の世界に……家族の元に帰るってことだけど……“別れ”の可能性は、それだけじゃない。……例えばその道半ばで俺が“死んだ”時。君達にちゃんとしたお別れをさせてあげられずに、突然会えなくなることだってある」
「死ぬって、そんな……」

 まさか、と言うような顔のはやてを見て、ああそうかと思い至った。
 まずはそこから説明しないと、だよな。
 「ごめん、まずはそこからだったな」と謝ってから、説明を行う。

「実際、俺自身死にかけたこともあるし、この迷宮に挑まされている人達にも、何人も犠牲者も出てる。正直言うと、凄く危険な場所で……この世界における同位体とは言え、『召喚されている状態』の君達にこの世界で何か有った場合、向こう・・・にどんな影響が有るかも解らない。だからはやてが、流石にそんな危険は冒せないって言うなら、無理に手伝う必要はないし、俺も無理矢理手伝わせようなんて思わない」

 そこまで言ってから一度言葉を句切り、彼女の様子を見れば、やはり何と言うか……不安か、不満か、それとも納得が行っていないのか……そんな感じの表情を浮かべていて。
 だから、安心させるように……安心して貰えるように、微笑み掛けて、続きを話す。

「……大丈夫。はやてが『手伝えない』って判断をしても、君が彼女・・に逢いたいって望むなら、頻繁には無理だけど、逢えるように喚ぶことぐらいは出来るから」

 だから、それも踏まえて決めて欲しい。
 そう言うと、はやては「そんなんあかん!」と強く頭を振った。

「私達は、貴方に迷惑掛けた。私が原因の事件の解決にも、手を貸して貰った。居なくなってしもうたあの子に、また逢えるチャンスまで貰って……危険だからって手伝わないような真似、出来るわけない……ううん、違う。手伝いたい。私に出来ることあるなら、手伝わして欲しい」

 はやての言葉が、強く胸を打つ。
 一時も逸らすこと無く俺の目を見てくる、彼女の真剣な面持ちが、その言葉が決して建前なんかじゃなく、心からの物だって如実に語っていて。

「──俺は、別に、手伝って欲しいからって提案した訳じゃ無いんだ」
「うん、解ってる」
「君は、自分が原因でって言うけれど──それだって、仕方の無いことの方が大きくて。……だから、少しでも報いてあげたいって思って、さ」
「……うん、ありがとうな。葉月さんの想いは、凄く伝わってきてる。何となくだけど、解るよ。私の……私と、リインフォースのことを、真剣に考えてくれてるんやって。だから私も思ったんよ。貴方のことを手伝ってあげたいって。今の私にどれぐらいのことが出来るかは分からないけど、それでも、私にできるだけの力になりたいって」

 はやての言葉が、強く胸に響く。
 フェイトやなのはもそうだけれど、本当に、適わないなと思わされて。はやてに「ありがとう」と言い──

「ちがう、そうじゃない。……ああいや、ありがたいのは本当なんだけど」

 話しが逸れた、と、仕切り直すために一度咳払い。
 「どないしたん?」と小首を傾げるはやてに、苦笑が漏れる。

「念のために確認なんだけど、はやてはリインフォースに逢いたいってことで良いんだよな?」

 俺の問いに、彼女は神妙な様子で、けれどもしっかりと「うん」と頷いた。

「解った。それと合わせて、手伝って貰う上で聞いてもらわないといけない“嫌なこと”が一つと……お願いしたいことが一つ、あるんだ」

 そう切り出すと、はやては「ええよ」と頷いて聞く体勢を取ったが、どうせ説明するなら一緒の方がいいだろうから、取り敢えず先にリインフォースを喚ぼうと提案する。

「ん、了解や。それで私はどうすればええの?」
「『連鎖召喚』の時には、喚ぶ相手に対応する人に触れないといけないから……ええと、手、良いかな?」

 差し出した手を、はやてが握ってくる。と、その手が小さく震えていることに気がついた。
 ……彼女の様子からすれば、“怖い”のとは違うんだろう。「緊張する?」と問えば、「少しだけ」と返ってくる。
 無理も無いか。そう思ったところで、俺の手を握るはやての手に、包み込むように重ねられる二つの手。

「なのはちゃん、フェイトちゃん……ありがとうな」

 フェイトとなのはが、はやてを見つめて、微笑み掛けて。異口同音に、「大丈夫」と、一言を告げた。
 短い言葉の中に籠められた、確かな想い。それは横で聞いている俺にも伝わってきて……いつの間にか、触れる手の震えは止まっていた。
 視線を向けると、頷くはやて。
 それを受けて、俺は空いている左手を前に伸ばす。

「『連鎖召喚チェイン・サモン:リインフォース』」

 スキルの発動を促す言葉トリガーを口にした次の瞬間、伸ばした手の先に生み出される球状魔法陣。それがカシャンと砕けて消えて、中から現れたのは──

「──リインフォース!」
「我が主!?」


 はやてが前のめりに乗り出してバランスを崩し、その拍子に車椅子が倒れ、ガシャンと音を立てる。
 けれど彼女の身体は、状況を把握することなく、慌てて駆け寄って来たリインフォースによって受け止められた。

「リインフォース……リイン……ぅわああああ!」

 それからしばらくの間、リインフォースに縋り付いて泣くはやての声だけが、この場に響いていた。



……



「なるほど……お前の事情も、我が主のご意向も解った。その上で、訊きたいことがある」

 泣き止んでしばし、ようやく落ち着いたはやてがリインフォースから離れたところで、「私からも説明した方がええやろ」というはやてと共に、現状の俺の状況を説明したところ、リインフォースからはそのような言葉が返ってきた。
 「俺に答えられることでしたら」と言うと、「それで構わない」と返してきた。

「私のこの身は、あの時確かに世界ソラへと還った。そこに居る、小さな勇者達に送られて、な。ならば今この場に居る“私”は、どこから喚び出された?」
「リインフォース、それは……」
「いえ、必要な事です、我が主。場合によっては──私では、我が主の力になれない可能性もありますから」

 リインフォースの言葉に、はやてが「え……?」と、言葉を失った。
 俺達もまた、彼女がはやてにそのようなことを言うとは思わず、咄嗟に掛ける言葉が出てこなくて。

「あの時は私は、自動防衛システムナハトヴァールが修復されることのないよう、我が身とともにリセットしました。つまりそれは、我が身と御身が持つ『書』との繋がりは既に切れているともいえますので」

 とても辛そうに、振り絞るようにはやてに告げるリインフォース。彼女の考えを聞いて、「そういうことか」と先程の言葉に納得する。
 それならばと、飽くまで自分の考えであり、それが正しいかどうかは解らないことが前提だけどと前置きし、彼女の疑問に答える。

「恐らくですけど……貴女の“存在”が世界に還ったのだとしたら、世界そのもの・・・・・から喚び出したんだと思います。例えば、ですけど……“世界”が水の入ったコップで、そこに浮かぶ氷が“人”だとして……貴女という氷が水の中に溶けてしまったとしても、逆に考えれば“貴女であったもの”は、確かにその水の中に存在しているってことですよね? だから、その水……“世界”の中から貴女という存在をサルベージして、こちらの世界で再構築している……って感じでしょうか」

 とは言え、今の説明では彼女がはやての力になれるかは判断できないだろう。だから「……大丈夫ですよ」と、出来るだけ安心して貰えるように──確証は、無いのだけれど──落ち着いた声を意識して、更に言葉を続ける。

リインフォース・・・・・・・さん。俺がこの『スキル』で喚ぶ時、その相手の名前を呼ぶんです。例えばフェイトなら、フェイト・テスタロッサ。なのはなら高町なのは。はやてなら八神はやて……って。それで、貴女の事を喚んだ時、何て言ったと思いますか?」
「それは……」
「『闇の書の意思』でも、『夜天の書の管理人格』でも、『融合管制機』でもありません。俺は、こう呼んだんです。……『リインフォース』と。貴女のその名前は、はやてに贈られた大切なもの、ですよね? そしてその名前は、確かに“世界”に刻まれている。貴女とはやてとの間には、確かな繋がりがあるんです。その貴女が、はやての力になれないなんてことは、絶対に無い」

 そう言い切ると、リインフォースは「そうか……」と一言呟いて瞑目し、はやてはそんなリインフォースに優しげに微笑みながら、そっと彼女の手を取った。

「リインフォース、納得できる答えやったか?」
「はい、我が主」

 目を開けて、はやてと同じように微笑みながら首肯するリインフォース。
 はやてはそんな彼女に「それなら良かったわ」と一つ頷き、

「あ、葉月さん。そう言えば私達が手伝うのに、聞いとかんとあかんことと、お願いってなんですか?」

 と、思い出したように問いかけてくる。
 ……そうだな、それを説明しないと。
 嫌な思いをさせてしまう心苦しさを押し込めて、居住まいを正す。
 俺の様子に、はやてとリインフォースもまた、身を固くしたのが見て取れる。
 特にはやては、恐らく先程俺が『嫌なこと』と言ったのを思い出したのだろう。
 ……何度経験しても言い辛い。……けど、他の『プレイヤー』の事を考えると、説明しない訳にもいかない。
 覚悟を決め、俺にとっての“はやて達がどんな存在か”を説明していき──

 ……俺の話を聞き終えたはやてが、「うー」と唸りながら考え込んでいる。
 当然ながら時間が必要かと、声を掛けようとしたところで、顔を上げたはやてがフェイト達に視線を移した。

「なのはちゃん達は、今の話は知っとるんよね?」

 はやてに問われ、フェイトとなのはは揃って「うん」と頷いて。

「ただ……たぶんなのはもそうだと思うんだけど……私も、その話を全部しっかり受け止めて、受け入れられているかって言われたら……ちょっと解らないかな」
「そうなん?」
「うん、流石にこればっかりはね。けど、葉月も別にそれで良いって……受け入れられなくて当然だって言ってるし」

 「ね?」と訊いてくるフェイトに、「もちろん」と肯定を返す。

「葉月が一番言いたいことは、これから私達が会うことになる人達の中には、“初対面なのに私達の事を知っている”って人がいるかもしれなくて……もしかしたら、何か不躾な事を言われて、私達が不愉快な思いをするかもしれないよってことだと思う」

 「私も実際に、会ったことがないのに私の事を知っている人達に出会ったことがあるから」と続けたフェイトの言葉に、はやては「なるほどなぁ」と頷き──そのまましばし考え込むと、やおら俺に視線を向けて、

「葉月さん。さっきのもう一つ……私にお願いしたいことって何か、聞いてもええですか?」
「ああ……別に、大したことじゃないんだ。きっと何も言わなくても、はやてならそうする・・・・だろうとは思うんだけど……一応、言っておきたくて。ええと……いまこうして、俺は君とリインフォースさんを逢わせることができた訳だけど……これで満足して、歩みを止めないで欲しいってこと、かな」
「……歩み……ですか?」
「そう。……俺に出来るのは、こうして一時的に君達を逢わせることぐらいだから。さっきも言ったけれど、いつか……いつの日か必ず、別れは来る。だからはやてには、これで満足してしまわないで、『リインフォース』の名を継ぐ子を、生み出してあげてほしい」

 そう言うと、はやては驚いたような表情を浮かべた後、何かを噛みしめるように瞳を閉じて──一つ、頷いて。

「大丈夫。もとよりそのつもりや。……うん、リインフォースにも、葉月さんにも恥じないえ子を創ってみせるよ」

 はやてはリインフォースに顔を向けると、ふわりと、日だまりのような笑みを浮かべて「なあ、リインフォース?」と言葉を掛けて。

「やっぱり……葉月さん、良え人やね」
「……そうですね。私も、我が主と共に協力することに、異論は有りません」

 そんな、凄く嬉しい事を言ってくれた。
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  1. 2018/02/08(木) 03:39:19|
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