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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase84:「乱戦」

 アルトリアと俺が繰り出した一撃は、敵軍の大半を吹き飛ばした。
「……とはいかないか、流石に」

 とはいえ、先陣の多くを削ることは出来たようだが。
 アルトリアが本来の力を発揮出来るのならばともかく……ってところかな。俺に括られた状態な上に、俺が十全に動くための余力を残しての攻撃だからなぁ。ま、それを考えれば上出来か。
 さて、流石に今のアルトリアの一撃は敵も味方も予想外だったのか、一瞬の行動の空白が生まれる。

『──総員、近接戦闘準備! 敵は怯んでいるぞ!』

 そこに響いたのは……稲葉さんの声か。
 流石に俺の事情を知っているだけに、立て直しが早い……というか、見かねて代わりに声を上げたってところか。
 稲葉さんの声に反応してか、味方が次々に武器を構える音が響き渡り、それに触発されたか、敵軍も体制を立て直すように動き出した。
 敵先鋒の後ろから来ていた第二軍が先鋒と合流し、恐らく指揮官であろうリザードマンの鳴き声が聞こえるとともに、軍が二つに分かれた。
 一方は俺達から離れた方へ、もう一方はこちらへ向かってこようとしているようで──

「──『ロングレンジ』、『トリプルショット』、『アローレイン』」
「『召喚サモン:フレイムホーネット』!」

 合流した敵軍が完全に分離する前に、俺の隣から聞こえた、スキル名を言い放つ二つの声。
 瑞希によって放たれた三本の矢は、空中で多量の矢へと変貌して敵軍に降り注ぎ、佐々木君が呼びだした、何匹もの炎で出来た大きな蜂が突貫して着弾するとともに爆発を起こす。
 それに続いて、思い出したかのように味方の遠距離攻撃要員が攻撃を再開した。

「想像できない光景を見たら、思考が止まるから」
「普通はあんな非常識な威力の攻撃が有るとは思わないし、仕方ないじゃん」

 味方の攻撃が止まっていたことをフォローするように、瑞希と佐々木君が言う。
 ……いや、俺は別に味方の攻撃が止まったことを責めるつもりは微塵もないよ。俺達が原因なのは解っているし。
 そうしている間に俺達のところには玉置と稲葉さんの妹──雪が合流。「稲葉さんは?」と聞くと、「今向かってる」とのこと。

「傾注!」

 そして態勢を立て直し、二部隊に別れた敵のうちの一隊がこちらへ向かいだした所で、アルトリアが声を張り上げた。
 ……とは言え、アルトリアは俺に召喚されているからか、彼女が話す言葉は『日本語』だ。そしてアルトリアは『アーサリア言語』の効果を受けていないため、日本語を解する人でなければ言葉が伝わらないのだけど。
 まぁ、ざっと見回したところ、幸いにも日本人がほとんどのようだし、言葉が通じていない人が居ても、パーティメンバーが通訳してくれるだろう。

「敵の方が遥かに多勢である以上、囲まれないように注意し、常に仲間で死角を補い合いなさい! 間違いなく乱戦になります。後衛が狙われないように特に注意をするように!」

 基本と言ってしまえばそれまでのこと。けれど、それを改めて伝えるのが大事なのだとアルトリアは言った。その“基本”すらまともに機能しなくなるのが戦場なのだ、と。
 先程の特大の一発も有ったし、アルトリアの言葉を話半分で聞くような人はいないと思いたい。
 その間にも敵軍は迫り──バリケードの近くまで来たところで、地面が崩落して空いた穴に、十数匹のリザードマンが落ちた。
 「かかった!」という誰かの声。まぁ、敵の方が圧倒的に多いと考えられる上に、恐らく、というレベルだが、相手が来る方角の予想も付くのならば、罠を仕掛けない手は無い。
 穴はそれなりに深く掘られており、当然落ちた敵は復帰出来ないか、出来たとしても時間はかかるだろう。また、穴の手前で止まることが出来た者達も、当然隙が出来る。つまり──

「──総員、攻撃開始!」
『オォッ!』

 絶好のチャンスであり、それを逃すことなく発せられたアルトリアの号令に応じ、各々が武器を構えて敵軍へと突撃した。


◇◆◇


 12月24日、16時50分。海鳴大学病院。
 12月の日は短く、既に夜の帳が落ちている。
 八神はやて。ある日すずかが、図書館で知り合い、意気投合した友達。
 先日急遽入院してしまったはやてをお見舞いしようと前々から予定を練っていたなのはたちは、クリスマスプレゼントを兼ねてお見舞いの品を渡すことにして、今日のこの日──なのはとフェイト、アリサ、すずかの四人で、はやての病室を訪れていた。
 和やかに、賑やかに、楽しげに談笑するなか、はやての家族・・が病室へと入ってきて──なのはとフェイトは、三度守護騎士ヴォルケンリッター達と邂逅する。

 ──そっちの事件も大詰め・・・だろうから──

 先日、葉月が漏らした言葉の意味を理解した二人。
 和やかに、賑やかに、楽しげに。そしてどこかに大きな緊張感を孕んだお見舞いの時間が過ぎ去って──一度目は敗北を喫し、二度目は引き分けに終わった相手との、三度目──運命の夜の幕が上がる。


◇◆◇


 既に戦闘時間は二時間を経過し、戦場は既に敵味方入り乱れる乱戦と化している。
 流石に戦場の全てを把握することなどは出来ないが、それでも大きな流れが起これば解ることはある。
 例えば、一時間ほど前に川向こうのオーク側の戦場から、『プレイヤー』達の大きな歓声がが上がったこと。恐らくはネームドモンスターの一体を倒したのだろう。
 そしてそれに次いでというか、それに負けじとでも言った方がいいか。こちら側でもネームドと思われる、大柄で四本腕のリザードマンの戦士が打ち倒された。
 俺達とは離れたところでのことなので、『アナライズ』による鑑定は出来ていないけれど、それが倒れた瞬間リザードマン達が大きく動揺したので、恐らくは間違いないだろう。
 恐らくは敵が再出現リポップでもしているのか、そこまで劇的に敵の数は減ってはいかないけれど、このままなら行ける。案外何とかなる──そんな、ある種楽観的とも言える声すら聞こえてきてしまうほどに順調で……だが、得てしてそういう時に大きな落とし穴があるというのは、どんな世界でも共通なのだろう。
 その時──戦いを開始した時点では中点を過ぎていた太陽が、燃えるような夕暮れとなって地平の彼方へ沈み行く、その夕焼けを背にして、それ・・は現れた。
 夕日を背にこちらに駆けてくる、数人の人影。逆光で判りづらく、一瞬『プレイヤー』かと思われたが、そのシルエットからそれがリザードマンであることが判別できた。
 そのリザードマン達の後ろ。リザードマン達に先導されるようにこちらへ向かってくる、大きな影。
 前を走るリザードマン達の、二倍から三倍はありそうな大きさで……近づいてくるにつれ、その異様さが見て取れる。
 六本足の象の身体に、象のように長く伸びた鼻と二本の大きな牙を持つ鰐の頭を付け、全身がびっしりと鱗に覆われた怪物。
 それは長い鼻を振り回し、前を走るリザードマンの一体を巻き取ると──バクリと、口の中へと放り込んだ。
 その行動と、リザードマン達の様子から、奴らはそれを先導しているのではなく──それから逃げているのだと理解する。
 ……いや、逃げつつ、先導しているのだろう。こちらへと。深く考えずとも解る。あれは、リザードマン達の身体を、命を張った策であると。

「う、あ、わああああああああああ!?」

 近づいてくる怪物の巨体と見た目、そして地響きに、誰かが叫び声を上げ、それとともに混乱が伝播していく。
 やはりリザードマン達はこの怪物の出現は織り込み済みなのだろう、敵には混乱は無く、こちらの様子に好機とみたのか、リザードマン達の攻勢が強まってきた。
 ──まずい。
 アレが「六体のネームドモンスター」のうちの一体かどうかは解らないけど……やるしかないか。
 隣で剣を振るうアルトリアと目配せをし──覚悟を決める。

「アルトリア、行くぞ!」
「仕方ありませんね──聞きなさい! アレの相手私達がします! 皆は落ち着いてリザードマン達を抑えなさい!!」

 俺に返事をした後、すぐに周囲へと檄を飛ばすアルトリア。
 俺達はそれに対する周囲の反応を見ること無く、異形の怪物へ向けて駆け出した。
 ……アルトリアの残召還時間は、約二時間強。
 アルトリアへ咲夜を召喚することを告げ、『二重召喚デュアル・サモン』を行使する。
 現れた咲夜は周囲の状況を見回した後、巨獣へと目を留め、「……また凄い状況ですね」と苦笑を浮かべる。
 俺もこんな状況で喚んでしまったことに気が引けるのは確かなので、「ごめん」と謝ってから、これからアレの相手をするので、咲夜にはその間、リザードマン達が邪魔をしないように阻止して欲しいこと、余裕があればこちらの援護もして欲しいことを伝える。

「俺達の背中、咲夜に任せる。だから、頼む」
「……その言い方はちょっとズルいですね。けど、解りました」

 もちろん、一人では限界があるだろうから無理はしなくていい。そう続けると、咲夜は「まったくもう」と言いつつも頷いてくれた。
 ある程度近づいたところで『アナライズ』で情報を取得し、その結果を二人にも伝え──近づく俺達に気付いた巨獣が、「ゴァアアア!」と低くも強い唸り声を上げ、迎え撃つように大きく地面を踏みしめた。


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名前:『暴食剛獣ジャガーノート』ダンガ・ルヘイア
カテゴリ:魔造生物モンスター/魔獣/ネームド
属性:地
耐性:水
弱点:火
「アグリア大草原に君臨する巨獣。その身体を覆う鱗は硬く、生半な攻撃では傷すら付けることは適わない。オーク語で『貪る王者』を意味するその名のとおり、草食獣も肉食獣も、人も、オークも、リザードマンも。このケモノの前では、全ては等しく食料である」

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