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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase81:「新生」

 フェイト、なのはと咲夜が顔を合わせた翌日。今日はアルトリアを召喚する日だ。
 昨日軽く身体を動かした感触をふまえて、今日から確りとやっていきたいと思う。……とは言え、やること自体は然程変わらないというか、特別なことはないのだけれど。
 まず午前中は、アルトリアに見て貰いながら基礎鍛錬を行う。
 昨日やったような、素振りや体捌きといった基本動作の確認。それにアルトリアとの模擬戦……というか、実戦形式で指導して貰う感じだ。
 現在リンカーコアによる魔力の制御ができないため、魔力による身体強化は無し。自身の身体能力と、リンカーコアに由来しないこの世界のスキルや称号の力で挑んだ……の、だが。

「……案の定と言うか何と言うか、歯が立たないなぁ……」

 思わず漏れ出た言葉に「ですが、以前よりもずっと良いですよ」とフォローしてくれるアルトリア。そう言って貰えるとまだ救われる。
 そして一度休憩を挟んでから、午後。
 バリアジャケットを身に纏ってみようかと試してみたが、残念ながら出来なかったため、『ショップ』にて簡素ながらも鎧と盾を購入し、第一層からゆっくりと回ってみることにした。
 とは言え最初のころはこんな感じだったので、道中に出会うケイブラットネズミメイスフロッグカエルを相手にした際も、特に問題無く相手取ることもできた。
 ……こうしてみると、我ながら成長したと感じられるのが嬉しく思う。とは言え、一騎当千の如く無双する……ようにはなれないだろうな、とも思うけど。
 ある程度回ったところで『マイルーム』に戻り、総評をアルトリアに貰ってから、改善点を洗い出す。
 そしてすぐに直せそうなところは見てもらい、残りは日々の鍛錬の中で改善していくように心がける。
 一歩ずつ、日々前身。それが基本で、大切なのだと自分に言い聞かせながら。


 翌日、咲夜を召喚時には、同じように第一層から少しずつ下ったり、その次の日のフェイト達の時は、彼女たちも今は魔法が使えない事もあって、部屋の中やすぐ前での鍛錬に抑えるなど、多少の違いはあったけれども、それから数日間は、ほぼ同様に過ごした。
 そうして五日目。フェイト達を召喚した時だった。
 何だか二人の様子が、ソワソワして落ち着かない感じだったため、「何かあった?」と訊いてみたところ、今日学校が終わった後に、二人のリンカーコアの検査も兼ねて、デバイス──バルディッシュとレイジングハートを迎えに行くのだとか。
 簡易検査では体調は万全。デバイスの修理も終わるので復調は完璧……となる予定とのこと。
 闇の書による蒐集が途中で終わって、リンカーコアに関して言えば、二人よりはまだ軽傷だった俺の方は回復したとは言えないというのに……。

「これが若さか」
「あはは……葉月さんはちゃんとした検査も受けられないし、“この世界”が、リンカーコアの運用はともかく、不調からの回復に合わないだけって可能性もあるし……」
「それに、ちょっとずつ良くなってるんだよね? それなら、ゆっくり慌てずに、だよ」

 思わず口を突いた言葉に、なのはとフェイトがフォローをしてくる。
 まぁ、元々の基礎能力も潜在能力も、彼女たちと俺では差があるしな。仕方ないと割り切ろう。


◇◆◇

 レイジングハートとバルディッシュを迎えに行ったフェイトとなのは。
 二人がそこで技術官のマリエル・アテンザからデバイスを受け取り──体調を気遣われた時に「むしろ前より魔力量が増えたぐらいです」とフェイトが答えたところ、マリエルがボソリと「若さだねぇ……」と漏らし、午前中の葉月の言葉と重なって、二人が思わず吹き出した、なんてことが有ったが。
 その直後、アルフから通信を受け、リンディと連絡が取れなくなったことを聞いた。
 ほぼ同時、先日フェイト達が襲われた事件に関して調査に来ていたアースラにて、該当地域──海鳴市において、大規模隔離結界が展開されたことを感知し、先んじて結界魔導師が四名ほど現地に入っていたが、結界を破ることに苦戦しているとの報告も入る。
 それらの事実と、アルフから受けていた通信により、隔離結界に閉じ込められたのがリンディであると判断したフェイト達は、即座に現地に向かう。
 転移座標は現場上空。自由落下に身を任せながら、二人は新たな姿となった相棒達を掲げ──

「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディッシュ・アサルト!」
『セーーット、アーーーーップ!!!』

 ──声を揃え、高らかに告げた。

 なのはの新しいバリアジャケット──セイクリッドモード。
 外側に見える違いは、手甲や上着等の細かな意匠の程度に留まっているが、その下に身につけているブレストプレートやインナーは大きく形状を変え、物理装甲やプロテクトレイヤーの追加、防御用積層構造の増加など、防御性能がより強化されている。
 対してフェイトの新しいバリアジャケット──ライトニングフォーム。
 こちらは基本デザインは従来に準じつつも、マントにあった襟を無くして視認性の向上を計り、ボディスーツに強化素材を使い、左腕に物理装甲の手甲を装備、ブーツを全金属製へと変更と細部の変更点が多い。
 そして、二人のデバイスもまた。
 レイジングハートとバルディッシュに付けられた、最大の追加機能である『CVK-792』──ベルカ式カートリッジシステム。
 事前に魔力を籠めた『弾倉』を用意し、それを随時装填することにより、莫大な魔力を運用することが出来るシステムだ。

 そうして、新たなる翼を手に、結界魔導師達のように隔離結界そのものを破壊しようとするのではなく、二人の力を一点に集中することによって、突破・・することに狙いを絞り──少女達は再び、戦場へと舞い戻った。
 なのはは鉄槌の少女と激しくぶつかりながらも、それでも言葉を交わそうと、必至に向かい合う。
 そしてフェイトもまた、剣を携えた騎士と再び相対した。

 戦斧を振るい、魔弾を放ち、己の得意な高速機動を途切れさせないように、相手の攻撃すらも受け止めいなして勢いを速度へ変え、斬り結ぶ。
 気持ちを抑えて。抑えて。抑えて。冷静に、落ち着いて──だけど、どこか苛烈に。
 そして、互いに力を込めた激突によって巻き起こった爆発で、一瞬、間隙が生まれた。

「──以前とはまるで別人だな。相当鍛えたか……だが、まだどこか逸りがあるか?」

 騎士の言葉に、フェイトは一瞬表情を強ばらせたあと、一度大きく深呼吸をする。

「……落ち着かないと、だめ。葉月は、あの人を恨んではいない様子だった。だから、私も、大丈夫」

 そのフェイトの声が聞こえたのだろう、今度は騎士の表情が一瞬揺れると、「……そうか、あの青年は無事だったか」と……そう、まるで“安心”したかのように言葉を漏らした。
 今度はフェイトがその言葉を聞き留め、同時に彼女が浮かべた表情を見て──どうして、と、疑問が頭をもたげる。

「貴女達は、どうしてこんなことをするんですか……? 何か、理由があるんですよね?」
「……全ては、何者にも譲れぬ願いのため。これ以上は言う必要は無い」
「それじゃあ──私が勝ったら、教えてくれますか」

 自分が打ち倒した相手の心配をして、無事を知って安堵する……そんな心を持った人が、ただいたずらにこんなことをするはずが無い。
 そんな想いを籠めたフェイトの言葉を受けて、彼女は一瞬目を見開いて、

「……我が名はシグナム。ヴォルケンリッターが将、シグナムだ。……お前の名は?」
「あ……、私は、フェイト。フェイト・テスタロッサです」
「──良いだろう、テスタロッサ。だが、来るからには命を捨てる覚悟で来い。悪いが、手加減は出来そうもない……我が身の未熟を、許してくれるな」
「構いません。……勝つのは、私ですから」

 真っ正面から、ひたと見据えて言い放ったフェイトの言葉に、騎士──シグナムは、楽しげに笑みを浮かべた。



……



 その夜、リンディは休暇を返上し、現場への復帰を。なのはとフェイトは嘱託魔導師として手伝うことを、現場指揮官のクロノに了承して貰い、事件の解決に向けて動き出し──そしてフェイトは、なのはが帰った後、リンディと静かな語らいを続けた。
 11年前の闇の書の暴走事件のこと。その時に命を落とした、リンディの夫でクロノの父親である、クライド・ハラオウン提督のこと。リンディが知りうる、クロノの心境のこと。そして──

「ねえ、フェイトさん。以前も少し聞いたけれど……お母さん……プレシアのこと、今はどう思ってる?」

 “家族の話”。
 その繋がりだろうか、リンディから問われて、フェイトは少しだけ考え込んでから、「……ごめんなさい。まだ、よく分からないんです」と、寂しげに笑った。

「あの事件があって、リンディ提督に引き取られて……リンディ提督が、クロノが、みんなが優しくしてくれて。
 嬉しくて、幸せなはずなのに……やっぱり、“あの時”の光景がまだ目に焼き付いてるんです。母さんが、アリシアが、落ちていって、いなくなってしまったあの時……そこで私の時間は止まったままになってしまっているところがあって……」

 そんなフェイトに、リンディが戸惑いながらも声を掛けようとしたのを遮るように、フェイトは「けど」と言葉を続ける。

「けど、それだけじゃないっていうのは、少しは解っているつもりです。……実は前に、同じ事を話したことがあるんです……その、葉月に。あの時も、自分の気持ちをなんて言えばいいのか、解らなかった。今だってそう。だけど……」
「だけど?」
「……あっち・・・でとても目まぐるしい日々を過ごして……それを思い返してみれば、私は、確かに“進んでいるんだ”って思える部分があって。
 そう思えたときに、こっち・・・で過ごした、“あの時”から今までの日々を思い返してみれば、そこにも確かに、少しずつでも“進んでいる”私も居たんだなって……だから、こうも思えるんです。いつかは分からないけれど、“止まったままの私”も進んで行くことができるのかなって」

 リンディは、「そうね」と優しく微笑みながら、フェイトのことを愛おしげに撫でる。

「ゆっくりと、進んでいきましょう? 一緒に、一歩ずつ。色々なことをお話ししながら」
「……はい」


◇◆◇


 夜──フェイトを再び召喚した際に、「報告したいことがあるんだ」と言われた。なのはも喚んで話を聞くに、『守護騎士』達と再び戦ったようで。
 その戦いの様子や、シグナムが俺が無事だと分かった時に、どこか安堵した様子を見せたこと。自分達も協力して、彼女達を追ってみることにしたこと……そんな、今日有った出来事と、これからの行動を教えてくれた。
 その後は折角だからと、新しいバリアジャケットやデバイス達をお披露目してもらい──普通に使用するために着るのではなく、ただ見せるためだけに身に纏うのは、なんだか凄く恥ずかしかったとのことである。
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