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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

Phase76:「強襲」

「『召還サモン:フェイト・テスタロッサ』」


 いつものように召還のためのワードを唱え、いつものように伸ばした手の先に出現した球状魔方陣。それが割れて砕け、中から現れたフェイトは、しかしていつもとは雰囲気の違う格好だった。
 白い色のワンピース……と言うだけであれば、さして珍しく無いのだけれど、その服には見覚えがあった。
 少し前に、フェイトがわざわざ着て見せてくれたもの。聖祥小学校の制服だ。あの時と違うのは、右手に筆記用具シャープペンシルを持っていることだろうか。

「あ、葉月──」

 こちらに気付いたフェイトが、俺の視線の向きに気付いたのだろう、右手に持って居ていたシャープペンへと視線を向けると、ふふっと笑みをこぼす。

「今ね、初めての授業なんだ」

 そう言って微笑むフェイトを見ていると、俺も自然と笑みが零れる。
 とは言え、そう言う事であれば、こちらにかまけさせるのも忍びない。

「じゃあフェイト、今日は学校の方に集中しなよ。依るにまた喚ぶから、その時に今日の話、聞かせて欲しいな」

 初めての学校に、友達。きっと今日は、フェイトにとって忘れられない、掛け替えのない日になるだろうから。
 そう伝えると、フェイトは「そんなに気を遣わなくていいのに」と言いつつも微笑みを浮かべて、「けど、ありがとう」と嬉しそうに言った。

「それなら……今日はお言葉に甘えるね」

 申し訳なさそうに言うフェイトに、気にしないでと返し「それじゃ、また夜にね」と告げて送還すると、彼女の身体が球状魔法陣に包まれた時に、「一人で無茶したらだめだよ?」と釘を刺されてしまった。まぁ、俺としても元よりそのつもりは無いから「了解」と素直に返しておく。……一層10階の時のような事が有れば話は別だけど、あんな事は早々無いだろうし。
 フェイトも「それなら」と言う風に頷いたところで、魔法陣とともに彼女の姿が消える。
 ……それにしても、学校ってことは『地球』に入ったんだな。と、その時点で『話』の流れを思い出し、疑問を覚える。
 じゃあ、なのははもう守護騎士ヴォルケンリッター達に襲撃されたのか? ……けど、それにしてはフェイトの様子は普通だった。俺に心配をかけさせないようにしてくれていたとしても、いつものようになのはを喚んだら、結局は解ることなのだし。
 ……そうなると、一番高い可能性は、守護騎士達の襲撃がまだ行われていないってことなんだろうけど……。
 あの日──俺が自分のことをフェイトに打ち明けた日から、数日たった日のこと。彼女は俺が知る“この先”のことを聞かないと決めた。それは2人で話し合って決めたことだし、フェイトの意見を尊重しようとは思う……のだけど、心配なものは心配なわけで。
 ……夜に喚んだ時に、それとなく注意は促しておこうと思う。



……



 フェイトを見送ってから一時間ほど経ったころだろうか。アルトリアに見て貰い、念話で注意を受けつつ剣の型を習っていると、不意に脳裏に『メッセージ』が来た感覚があった。
 アルトリアにそれを告げて手を止め、ステータスウィンドウを開いて確認する。
 ……差出人はゆたか──一昨日助けた双子の、男の子の方だった。
 内容は、『第二層』を回ってみたいと言うもので──どうやら彼らは、第二層に入って割とすぐにオーク達に囚われてしまったらしく、まともに第二層を越えた訳では無いからだとか。……しっかりした子ども達である。
 とは言え、二人だけで行くにはやはり怖い。だから着いてきて欲しい、と。……あんな目に遭ったんだし、無理もないか。
 ともかく、そう言う事であればと了承の返事を出す……前に、俺一人では荷が重いため、稲葉さん達も誘って良いかと訊いてみると、すぐに「もちろんです」と返ってきた。
 それじゃあ早速と、稲葉さんへと豊から誘われた旨を記したメッセージを送付……とは言え返事が直ぐに来ると言うわけでは無いだろうから、今のうちに合流方法でも考えておくか。
 『第二層』は入り口が複数有る。そんな中で二人や稲葉さん達と合流するには……俺が空から探して二人を回収して、稲葉さん達の所に行くしかないか。
 そう思ったところで、稲葉さんから返事のメッセージが届いた。内容はもちろんオーケー、いつでも行けるよ。とのこと。あと、パーティを組んでいると同じ場所に出られるから、先に豊達とパーティを組んでおくと良いよ、とのアドバイスもあった。
 稲葉さんからの返事を踏まえて豊に伝えると、どうやら彼といずみ──双子の女の子の方──はすでにパーティを組んでいるそうなので、そこに俺が入ることにする。
 送られてきたパーティへの招待に了承をすると、ステータスウィンドウの中にパーティメンバーの名前が表示されていた。
 これでようやく準備完了だ。
 これから飛ぶ旨を豊と稲葉さんへと送り、アルトリアに「行ってきます」と声を掛けて、行き先を『第二層』へと設定した転移陣ポータル・ゲートに乗る。
 転移陣の周囲の光景が、室内から森へと変化したところで、横合いから「にーちゃん」と声を掛けられた。そちらを向けば、フェイトと同じぐらいの年の頃の子供が二人。……豊と泉だ。
 すぐに駆け寄ってきた二人に「元気だったか?」と声を掛けると、「うんっ」とその言葉通り、元気な返事が返ってくる。
 ……と、豊はキョロキョロと周囲を見回し、「あれ?」と首を傾げた。

「どうした?」
「あのときのお姉ちゃんは……?」

 恐る恐ると言った風に問いかけてくる豊。あの時の……と言うと、アルトリアのことかな。
 「ごめんな。お姉ちゃんは今日は居ないんだよ」と言うと、「そっかぁ」と酷くがっかりした様子を見せた。喚んであげたいところだけれど、朝にフェイトを召還しているため、スキルの仕様上喚べないのだ。
 ……と、そんな豊に泉が近づいていくと、「ほら、ゆたか」と項垂れる豊をつついて何事かを促した。
 豊は直ぐにハッと顔を上げると、泉と目配せをしてから、二人揃ってぺこりと頭を下げてきた。

「今日はよろしくおねがいします」

 フェイト達は別にしても、この年頃の子供にしては確りしているな。……まぁ、こんな状況に追い込まれたら、そうならざるを得ないか。
 そんな感心とも同情ともつかない想いを抱きつつ、任せておけと言葉を返す。

「よし、それじゃあ稲葉さん達を探しに行こうか。そろそろ来ているだろうし」

 あっちがどのタイミングで来るか解らないけど、俺達とそう変わらないだろう。そう思いながら掛けた言葉に、豊が「うん」頷いた後「でも、どうやって?」と首を傾げた。
 泉も同じく気になったらしく「歩いてさがすんですか?」と訊いてくる。……流石にソレは無理かな、と言うことで、事前に考えていた案──空から捜して、見つけたら二人を運ぶ──を伝えようとした、ちょうどその時だった。

「あれ?」

 そんな聞き覚えのある声がして振り向くと、経った今話題に出ていたその稲葉さんが、転移陣の上に立っていた。恐らく彼と同じようなタイミングで転移したのだろう、続いて彼の周囲に、パーティメンバーも現れる。
 ……噂をすればってやつか。「偶然だね」という稲葉さんに「まったくです」と返しつつも、「本当に偶然だろうか?」なんて疑問が頭を過ぎる。……別に彼らが何かをしている、なんて疑っている訳じゃなく、むしろ、脳裏に浮かぶのは詳細不明な自分のユニークスキルだ。
『絆を結ぶ程度の能力』
 もしかしたら、こういった“偶然”を引き寄せるような力でもあるのかも……なんてことを思った。

「ま、お互い捜す手間が省けたって言うことで」

 そう言って笑う稲葉さんに「そうですね」と返したところで、豊と泉が稲葉さんの所へ来て、俺の時と同じように「今日はよろしくおねがいします」と頭を下げた。
 そんな2人に「おう、よろしくな」と笑いかける稲葉さん。
 次いで豊達が他の皆にも挨拶を終えたところで、「じゃあ、そろそろ行こうか」と皆を促し、森へ足を向けた。



……



 今回は豊達の希望に添っての行動のため、特に目的は無い。言うなれば観光のようなものだ。……モンスターが出る物騒な観光だけれど。
 ……とは言え、流石にそれだと締まりが悪い。ということで、歩きながら話し合い、木の上や少し開けた所からならよく見える、例の巨木──霊樹ファビア──を目的地として進むことにした。
 一度上に上がって見てみたところ、幸いにも俺達が出てきた転移陣は、比較的『霊樹ファビア』に近い位置に有ったからっていうのもある。
 そんなわけで森の中の探索行。
 道中では泉が、幻覚作用のある鱗粉を撒き散らす『ウィスプ・バタフライ』の綺麗さに目を奪われたり──近づかなければ綺麗なのだ。近づかなければ──、豊が巨大なカマキリ『ジャイアント・マンティス』に目を輝かせたり──怖いけどカッコイイ! だそうだ──。
 加えて、猛毒を持つ『ヴェノムスネーク』。木の上から忍び寄って荷物を奪っていくらしい、手癖の悪い猿『フェヴァルエイプ』。名前の通りこの森の固有種だとか。年輪を経た樹木が意思を持った『トレント』。体長が1メートル以上になろうかという巨大な蜘蛛『グァマンテ』。エルフ語で“悪食”って意味らしい。……これらの、前は遭遇しなかったモンスターにも出遭った。
 ……とまぁ、豊達と第二層を回り、無事に『霊樹ファビア』の根元付近まで辿り付いたところで、もう大分空も暗くなった帰りの道中。もう少しで転移時に着く、というところで、不意に頭痛が襲ってきた。
 耐え難い……とまでは行かずとも不快なその感覚に頭を抑え──

(──葉月!)

 まるで殴られたかのように、ガンッと脳裏に声が響いた。

「くっ……フェイ……ト?」

 思わずその場に蹲り、漏れ出た自分の言葉に確信する。……そうだ、聞き間違えようはずがない。今の“念話”は、フェイトからのものだった。
 けど、なぜ。
 今は彼女を召還していない、それは確かだ。……それじゃあまさか、“世界”を超えて届いたとでも言うのか。
 ──嫌な感じがする。漠然としたものだけれど、凄く。
 「大丈夫か?」と声を掛けてくれる稲葉さんには悪いけれど「先に戻ります」と断りを入れ、豊と泉のことを頼むと──快く頷いてくれたので助かった──、転移陣まで行くのももどかしく、その場で『帰還の巻物リターン・スクロール』を広げる。

「あ、待っ……」

 恐らく俺が具合悪そうに突如蹲ったからだろう、自分の背中を摩っていてくれた人が居たことに気付いたのは、足下に巻物による転移陣が広がり、至近から慌てた様子のそんな声が聞こえた後だった。
 瞬転。
 目に映る景色が、森の中から、もうすっかりと見慣れてしまった『マイルーム』のものへと変わった。
 確か俺のすぐ後ろを歩いて居たのは瑞希だったはずと思いながら、慌てて振り向いたそこには、案の定困ったような表情を浮かべた彼女が居て。

「ごめん、周りを確認するのを忘れてた」

 不注意だったと謝ると、彼女は小さく頭を振って「気にしなくて良い」と返してきて、次いで、「何か有った……の?」と疑問を投げかけてくる。
 当然か、もう転移陣も近いのに探索行を無理矢理切り上げ、先に『帰還の巻物』で帰ってきたのだから。しかも瑞希はそれに巻き込まれてここに居るわけだし。
 とは言え悠長に説明しているのももどかしく、「今は召還していないフェイトの声が聞こえたんだ。けど朝は一度喚んだから、もしかしてって思って……」と簡潔に説明しつつ、部屋の中を見回す。……やはりと言うか、フェイトとなのはの姿は無い。
 ……となるとやはり、“彼女たちの世界”からの念話が届いたのか。有り得ないとは思うことだけど、状況から考えればそれしかない。

(ハヅキ、落ち着いてください。フェイトを召還してみてはどうですか?)

 と、今の瑞希への説明で大体察してくれたのだろうか、アルトリアからの念話が届く。
 そうか、そうだよなと思い……落ち着けと、一度大きく深呼吸をする。

「ちょと今からフェイトを喚んでみるから」
「解った。ここで待たせてもらうね」

 帰るなら『帰還の巻物』を渡すから、少し待って欲しい……と最後まで言うまでもなく、瑞希は頷いてソファに腰掛けた。
 「悪い」ともう一度謝ってから、少し離れて右手を伸ばし、フェイトを喚ぶためのキーワードを唱え──

「『召還サモン:フェイト──」

 その瞬間、再びズキリと頭痛に襲われる。
 けど、これは先程の念話の時にあった物とは違う。どちらかというならば、あの『記憶の水晶メモリー・クリスタル』でスキルを覚えるときのような──、この世界に初めて来た時に、知識を植え付けられた時のような──
 そして気付いた。今、俺の身体を、金色の球状魔方陣が包んでいることに。
 こちらの様子を見ていた瑞希が、慌てて駆け寄ってきて、何かを叫んでいることに。
 けれどその声は聞こえず、視界はそのまま色合いを濃くした魔法陣の色に覆われて──


◇◆◇


 ──一瞬の暗転の先に、視界は切り替わる。
 風が吹いた。“外”の気配。

「……ぅ……ぁ……はづ……き?」

 小さな、消えそうな声。
 振り向いたそこには、小さなクレーターのようになった地面と、そこから這い出したのだろうか、欄干に──その時点で、自分が今居るのが陸橋のような場所であることに気付いて──もたれるように立っている、傷ついたフェイトと……眼下に見える、破壊された噴水らしきものの側に倒れ伏す、なのはの姿が──

「──何者だ?」

 不意に聞こえた声に再び振り向くと……恐らくは俺が動揺して気付いていなかっただけで、最初からそこに居たのだろう、赤い髪をポニーテールに纏めた、赤と白の『騎士服』に身を包んだ見覚えのある・・・・・・女性。
 その右手には抜き身の剣……否、アームドデバイス。そして左手には、黒い表紙に金色の十字の装飾が施された、一冊の本が──
 知っている。彼女が何者か。
 知っている。彼女の持つその本が何か。

「……その格好、魔導師か。その娘の仲間か?」

 ──守護騎士ヴォルケンリッターの将、シグナム。そして……『闇の書』。

 この瞬間、俺は、自分が今『地球』に──それも、フェイト達の世界に居るのだと言うことを、未だ呆然とする頭で理解した。


※※【ユニークスキル】の情報が更新されました!※※

『キャラクター召喚・Lv3』
 :術者の知る創作物のキャラクターを召喚することができる。連続召喚時間は最大3時間。送還後、召喚していた時間と同時間のスキル使用不能時間ディレイが発生する。
  派生スキルの効果を除き、1日に於いて召喚できるのは1キャラクターのみである。
  派生スキルの効果を除き、連日で同じキャラクターを召喚することはできない。1日の基準は午前0時であり、それを基準にしてスキル使用不能時間もリセットされる。
  召喚可能キャラクター
  『フェイト・テスタロッサ』
  『アルトリア』
  『十六夜咲夜』
  派生スキル
  『連鎖召喚チェイン・サモン』:残召喚時間を半分にし、召喚中のキャラクターに関係する人物を追加召喚する。連鎖召喚中の時間に応じて加算されるスキル使用不能時間は2倍になる。前提スキル『キャラクター召喚・Lv2』『召喚師の極意・Lv2』。
   【召喚可能キャラクター】
     フェイト・テスタロッサ:『高町なのは』
     アルトリア:召喚不能
     十六夜咲夜:unknown
   ・該当する特定異世界との接続が拒絶されました。『アルトリア』の状態により、『アルトリア』の連鎖召喚が無効化されます。
   ・『アルトリア』の連鎖召喚無効化に伴い、『アルトリア』のスキル使用不能時間に減少補正が掛かります。

  『二重召喚デュアル・サモン』:残召喚時間を半分にし、現在召喚中のキャラクターの他に、召喚可能キャラクターの内から一人を召喚することができる。二重召喚中の時間に応じて加算されるスキル使用不能時間は2倍になる。
  二重召喚において召喚したキャラクターに係る連鎖召喚は、召喚時間半減等、使用に対する条件が存在しない代わりに、莫大な魔力を必要とする。前提スキル『キャラクター召喚・Lv3』『召喚師の極意・Lv3』
  
  『反転召還リバース・サモン』:特定条件を満たした、強い“絆”を結んだ召還可能キャラクターの世界へと召喚される。連続召喚可能時間は3時間。術者の意識の喪失等でも送還される。再使用には、召喚可能キャラクターが再度特定条件を満たす必要がある。前提スキル『連鎖召喚』『絆を結ぶ程度の能力』。
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