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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

永遠神剣之章:106.終焉の地、戦いの始まり。

 『写しの世界』を旅立った翌日。

 この日は結局何か特別な行動をするというわけでもなく終わった。……と言うよりも、何も出来なかったと言った方がいいだろうか。
 校内の時計が昼を過ぎたあたりからだろうか、次第に次元振動が酷くなっていき、その日の夜などはロクに眠る事が出来ないほどの揺れになっていたのだ。
 ……まったく、決戦前に消耗してどうするんだ。なんて思ったところでどうしようもないのだけれど。
 そして、更に翌日。
 いよいよ目的地も近いとなり、戦装束に身を包み、生徒会室へと集った俺達。
 校舎に回すエネルギーなどは既に切られて最低限に抑えられ、それらは全てものべーが航行する為に使われているため、部屋の中は薄暗い。
 本来であれば、時間樹の枝が発する淡い光が入ってくるであろう窓からは、次元振動による影響か、稲光のような激しい光が入ってくる。
 まるで嵐の中を進む船のように、上下左右にシェイクされるような揺れに皆声を上げながら翻弄されていた。

「希美、大丈夫か?」

 そんな中、世刻の声が聞こえ、全員の視線が永峰へと集中する。
 答える声は無い。
 ものべーの操作に集中しているのだろう。ものべーからのフィードバックも強いのか、脂汗を浮かべながらも、彼女はちびものべーを抱き締めるように抱え、ぎゅっと目を瞑っている。
 そんな彼女の様子に、いつの間にか他の皆からの、揺れに対する文句や悲鳴も消えていた。一番大変な永峰が必至になっているのに、揺れ程度で弱音を吐くわけには行かないってところだろう。
 その時ものべーを一際大きな揺れが襲った。
 流石にバランスを崩して倒れた永峰を、たまたま近くに居たので後ろから咄嗟に受け止めた……のは良いのだが、こんな状況では俺自身もバランスを保っていられるはずも無く、そのまますっ転んだ。
 なんとか永峰の下敷きになるように倒れることが出来たが、したたかに背中を打ち付けてしまった。流石に痛い……けどまぁ、彼女が無事だったようなので良しとしよう。
 それにしても……この状況において尚ちびものべーを抱いて集中し続けているのは凄い。もしかしたら、自分が今倒れた事も気付いていないんじゃないだろうか、なんて思ってしまう程の集中っぷりだ。……それは良いんだが、永峰とものべーの現状のせいで動くに動けない。
 どうせこの状況じゃ、立ち上がってもまた転ぶか。
 相変わらずの激しい揺れと、集中しきった永峰の様子に、再度立ち上がることを早々に諦め、とりあえず何とか上半身だけでも起こして床に座り込むような体勢に整える。
 多少は気休めにでもなればと、永峰に単体回復アーツティア・オルを掛けてやると、彼女の表情が少し和らいだ。
 そこで漸く目を開けて、自分の現状を確認したらしい永峰。彼女が何か言う前に頭をぽんと撫でてから「気にするな、集中してろ」と言うと、笑みを浮かべて「ありがとうございます」と返って来た。
 そのまま再びちびものべーを抱き締め直して瞳を閉じ、ものべーの制御に集中する永峰。こちらに背中を預けてくる彼女の身体からは、先程までよりも幾分強張りが解けている気がした。
 そんな彼女の邪魔をしないように支えつつ、時折回復アーツを掛けてやりつつ、絶え間なく襲い来る次元振動の揺れから気を逸らすために、自然と俺に背中を預ける形になる永峰の温もりやら柔らかさやら色々な感触に意識を集中してみた。うむ、役得である。
 それから如何程の時間が経っただろうか。
 次元振動の嵐の中を渡りきり、ものべーは見事俺達を『根源区域』へと送り届けてくれた。その代償に、恐らく当分の間は次元間を飛ぶことも出来ないであろう程に傷ついてしまったが。
 頑張ってくれたものべーの為にも、負けるわけには行かない。そんな言葉と共に、俺達は最後の戦いの地へと足を踏み入れる。
 『理想幹』がこの時間樹の中枢……幹であるならば、『根源区域』はこの時間樹の深奥……根だ。
 淡く光を放ち明滅する、正方形のブロックが組み合わさって出来た通路。時間樹の『根』が幾重にも絡まり、神秘的な様相を呈した空間。ナルカナを始め、世刻や暁の様な『前世の記憶』によってここを見たことのある者達はこの光景を眼にして「懐かしい」と称しているが。
 そして聞こえて来るは、整然とした足音。
 通路の向こうに姿を現す、エターナルアバターの群れ。

「……行くぞ。今までのミニオンと同じだと思うなよ?」

 サレスの声に『応』と返した皆は、各々の神剣を構える。
 ──さあ、最後の戦いの始まりだ。



……
………


 湯水の様に現れるエターナルアバター達。放たれる神剣魔法は雨の如く、振るわれる刃は嵐の如く。道を進めば進むほどに、戦いは激化の一途を辿る。
 深奥にいるエト・カ・リファを目指してひた走る俺達の前にソレが現れたのは、幾度目かのエターナルアバターの襲撃を乗り切り、僅かに一息吐いた時だった。
 ズンッと地響きを立て降り立った、しなやかにして強靭な筋肉を有する巨躯。その背には右側のみに白と黒の片翼を生やし羽ばたかせたている。鉤爪の様な足先は大地を踏みしめ、頭部には一本の黒く太い角を有し、その相貌は獣のようだ。

 『原初存在・激烈なる力』。

 エト・カ・リファによって生み出された、この時間樹が誕生した頃より存在するエターナルのうちの一人。それに続くように、激烈なる力の背後から現れる無数のエターナルアバターたち。
 そして──。

「おや……遅かったですね。もう少しでそこの激烈なる力おおきいのと一戦交えてしまうところでしたよ」

 悪戯っぽく笑いながら、激烈なる力とは別の方角から現れた、彼女。
 白き衣を翻し、その背に艶やかな翼をはためかせ、軽やかな鈴の音と共に。

「……鈴鳴、何故……」

 あの世界で彼女と出会ってから経過した時間は五日。まだ時間的にこちらにアドバンテージがあったはず……そんな考えから口を突いて出たその名に、呼ばれた少女は場違いとすら思えるほどの柔らかな笑みを浮かべた。

「おっと、言っておきますが……私は約束は破っていないですよ?」

 俺の考えを読んだかのように言う鈴鳴の言葉。約束、と言うのは間違いなく、あの時言った「写しの世界を基準にして七日後」ってやつだろう。……ってことは、まさか……。
 “その可能性”に思い至り、そんな基本的な事に気付かなかったなんてと、自分の浅はかさに思わず歯噛みする。
 そう、彼女はウソをついてなど居ないのだろう。きっと、既に写しの世界では七日が経過しているのだ。つまり──

「ふふっ、失念していましたね、祐さん? ……この時間樹において、時間の流れと言うものは全て同じと言うわけではないと言う事を。……そう、あなた達がここ、『根源区域』へと向かっている間に『写しの世界』では七日が過ぎていますよ。……とは言え、遅すぎた、と言うわけでも無いですが」

 そう言った鈴鳴は、俺達と激烈なる力を警戒しつつも艶やかに微笑みかけてくる。

「今から急いで追いかければ……イャガとスールードわたしがエト・カ・リファに辿り着く前に追いつけるかもしれませんね」

 そしてそんな言葉と共に、楽しそうにくすくすと笑った。
 彼女の言葉に感じる、違和感。
 それを感じたのは、彼女が『わたし』と言ったとき。これは以前『写しの世界』において彼女と逢った時に交わした会話の中でも感じたもの。あの時はたしか──『わたしとわたし』だったか。
 一体どういうことなんだろうか。そう思い、鈴鳴に注意を払いつつも頭の片隅で彼女に関する事を反芻する。
 彼女は少なくとも千年以上は生き、世界規模でマナを集める事ができ、自身の分体を生み出して行動する──そこまで考えて、漸く思い至った。

「……以前にあったときの会話からどこか違和感を感じていたんだが……やっと解ったよ」
「ふむ。何でしょうか?」

 『スールードわたし』と『鈴鳴わたし』のニュアンスの違い。
 思い至った結論。
 それは──

「今イャガと行動を共にしているのは……お前の“本体”だな?」

 俺の言葉を聞いた鈴鳴は、楽しげに笑みを浮かべて笑う。

「……ええ、そうです。今イャガと共に行動しているのは私の本体です。……イャガとスールードわたし。あの二人が相手ではエト・カ・リファといえど然程もたないでしょうから、急いだほうがいいですよ?」

 行けるものでしたら。
 そう言って神剣を構えた鈴鳴。それに相対し、俺達もまた各々が神剣へとマナを籠めた、その瞬間。まるでそうはさせじと言わんばかりに、怒気を孕んだ咆哮が響き渡った。

「ルォォオオオオオオオオオオオ!!!」
「くっ! てやああ!!」

 痺れを切らしたかのように襲い掛かってきた激烈なる力。その鋭利な鉤爪による一撃を、奴の前に飛び出したユーフィーが『悠久』で受け止めた。
 ぶつかり合う爪と光の刃。弾かれるように離れる二人。
 そしてそれを切欠とするかのように、事態は急速に動き出す。

「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 己の邪魔をしたユーフィーを目先の敵と定めたらしい激烈なる力が再びの咆哮を上げ、それと合図に進軍を始めるエターナルアバターたち。

「祐兄さん! この敵さんはあたしが引き受けます! 祐兄さんは先に行ってください!!」

 一方でユーフィーは『悠久』を激烈なる力に向け、こちらに背を向けたまま、そんな言葉を発した。
 それに一瞬「でも」といいかけ、言葉を飲み込む。
 状況を判断すれば、この場は任せて進むのがベスト。……ユーフィーの好意を無駄にしちゃいけない。彼女なら、大丈夫だ。……信じよう。

「アバターは我々が引き受ける! 望、ナルカナ! お前達はエト・カ・リファの下へ急げ!!」

 そう判断したところで、サレスが世刻とナルカナへと指示を出し、二人と頷き合って足を踏み出す。
 そこに立ち塞がるのは、やはり鈴鳴で──。

「…………ふふっ、まあいいでしょう」

 強行突破するしかないか、そう思った俺達に掛けられたのは、そんな思ってもみなかった言葉だった。
 どう言う事だと、思わず訝しげな表情を浮かべてしまった俺に、彼女は言う。

「本当なら貴方の相手は私がしたいところですが……其の役目はスールードほんたいに譲りましょうか、ということです。それに──」

 私の相手は、彼女達がしてくれるようですから。
 そう言って鈴鳴が視線を向けた先に居たのは、クリストの巫女達。

「そう言う事だ。祐。きみは先に行って、イャガ達を食い止めてほしい。……なに、直ぐに追い付く」

 鈴鳴に『凍土』を向けたまま、ルゥが言う。
 ここは任せろと、言葉にせずとも伝わってくる。
 ならばこそ、俺が返せる言葉は一つだけだった。

「……皆、ここは任せた」

 俺達は俺達の成すべき事を成すために、俺と世刻、ナルカナは深奥へ向けて駆け出した。
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  1. 2015/06/26(金) 08:31:41|
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