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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

永遠神剣之章:77.苦渋の、撤退。

 その場に居る全ての者の心にその存在を刻み付ける名乗りを上げたアネリス。

 そしてそれを聞いた者達が呆然とする中を、悠然とした足取りで通り抜け、ルゥとユーフォリアに抱えられた祐の元へと戻ると、彼の額に手を当てながら「うむ」と一つ頷いた。
 そんなアネリスに対してユーフォリアが視線を向けると、その視線に篭められた想いを汲んだアネリスは「案ずるでない」と一言発する。

「急激なマナの減少と、神剣の本能による精神的負荷によって気を失っているだけに過ぎぬ。直ぐに気が付くであろう」

 続けられたアネリスの言葉にほっと息を吐くルゥとユーフォリア。
 そして二人が祐へと視線を向けた、その瞬間、それは起こった。
 『理想幹』と『ログ領域』を結ぶゲート。そこからもやの様な、黒いモノがにじむ様に出てきたのだ。

「な、なんじゃこれは! どうなっておる!?」

 皆の気持ちを代弁するナーヤの叫びが響くと同時に、ゲートがじわりと、黒く染まっていく。
 そしてそれがゲート全体へと及ぼうかとした時、未だ無事であった部分から光が飛び出した。
 始めは警戒していたナーヤ達だったが、光がサレス達の姿を取っていくに従って緊張を解き、そこに駆け寄っていく。

「おお、無事だったか!」
「……ところで、望。斑鳩はどうした?」

 サレス達が完全に姿を現し、その無事を喜ぶ皆であったが、それも束の間、絶が疑問の声を上げた。
 出てきたのは、三人。サレスと望。そして、望に抱きかかえられた希美。……そう、沙月の姿だけが、この場に無かったのだ。
 絶の問を受けて、望の表情が悔しげに歪む。

「先輩は……俺達を逃がすために……」
「沙月は……まだあの中に居る」

 そして、答えるサレスもまた、同じように。
 それを聴いた皆の表情は愕然としたものへと変わり、この場を沈黙が支配した。

「……俺がもう一度入って、先輩を連れ戻してくる。サレス、中に入れてくれ!」

 沈黙を破り、サレスに詰め寄る望であったが、『ログ領域』の中に入るために使用した装置によって、中の様子を伺っていたサレスは静かにかぶりを振った。

「中は今、この黒いマナで酷い状態だ。今入ったら、何も出来ずに簡単に身体が消し飛ぶぞ」

 サレスに説明され、今入る事は叶わないと思い知らされた望は、「ちくしょう……」と、悔しげに拳を握り締めた。
 そんな望へ、サレスは淡々と語り掛ける。

「望、ここは脱出するぞ」
「なっ……先輩を見捨てるのか!?」

 サレスとて、出来ることならば沙月を助けたい。だが、彼はこの『旅団』と言う組織のリーダーなのだ。である以上、彼は旅団員全体のことを考えねばならない。
 激昂する望に対して、サレスはあくまで冷静に、言葉を紡ぐ。

「では、どうする? ここに残っていては、この黒い光……マナに飲み込まれるぞ。そんな事になれば、それこそ沙月の行動の意味がなくなるだろう」
「っ……わかった……」
「よしっ……行くぞ、皆のもの。ものべーまで一気に走れ!」

 望がサレスの言葉に頷くのを見て、ナーヤが皆へと声を掛ける。
 それに前後し、気を失っていた祐の意識が覚醒した。


                  ◇◆◇


「……っ……」

 思い出されるのは、こちらに延ばされるアネリスの手と、彼女の言葉。……どうやら、気を失っていたのか。
 身体を起こし、若干ぼうっとする頭を振ろうとしたところで、自分の身体が誰かに抱きかかえられているのに気付いて、目を開ける。

「……ルゥ、ユーフィー?」
「あっ……気付いたんですね」
「ん……身体は大丈夫か?」

 問いかけてくる彼女達へ頷いて返すと、離してもらってその場に起き上がる。
 周囲の様子を見れば、場所は未だ『理想幹』中枢。皆の中にサレスと世刻、世刻に抱きかかえられた永峰の姿も見て取れた。
 そして、周囲を侵食するように漂う、靄の様な黒いマナ。
 俺が立ち上がった事で、俺の意識が戻った事に気付いたか、駆け寄ってきたワゥが飛びついて来たので受け止めてやる。

「ユウ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ」
「ほらワゥ、離れなさいよ。……まったく……余り無茶するんじゃないわよ。けど……その、ルゥ姉さまを助けてくれて、ありがと……」

 俺の身体の様子を問いかけてくるワゥへ頷いた所で、ワゥに続いて来たゼゥがワゥを引き剥がしながら礼を言ってきたので、「どういたしまして」と返した。
 言い方や態度が、何て言うか、素直じゃないなぁと思わず苦笑してしまったが。
 そこに、側で俺達の様子を眺めていた、黒髪の少女が近付いて来る。
 ユーフィーに瓜二つなその姿。けれど醸し出す雰囲気はまるで違う……改めて見ると、何と言うか、彼女がこうして実際に目の前に居るのは不思議な感じがするな。

「ふむ、祐。大事無いか?」

 ぺたぺたと、俺の身体を触りながら訊いて来るアネリスへ、「全く問題ない」と返すと、彼女は小さく微笑む。
 今まで“夢”で逢っていた時も、彼女の笑みは不敵なものばかり見ていたから、こう言った表情は新鮮だ。
 それはともかく現状を知りたく、「……それで、状況は?」と問いかけたところ、俺の顔の直ぐ側にナナシとレーメが飛んで来て、報告してくれる。

「はい。マスターが意識を失ったあと、アネリスがミニオンを殲滅。その後ゲートより『黒いマナ』が出現。後、サレス、世刻、永峰の三名が帰還。そしてこれより、ものべーへと急ぎ戻り、ここから脱出する段階です」
「そうか……斑鳩は?」
「サツキは『ログ領域』に取り残されたらしい。だが、“今は”助け出すのは不可能、と言うところだな」

 なるほど……現状は概ね“原作”通りになっちまったか。
 ……斑鳩の事は、世刻達と一緒に『ログ領域』に入って、何とかしようと考えてたからなぁ……失敗したな。とは言え、今更悔やんでもどうしようもない。斑鳩に関する事には、俺は何も介入していないから“原作”通りだとすれば、必ず助けるチャンスは来る。その時に、全力を尽くそう。
 そうこうしているうちに、「ものべーまで走れ!」と言うナーヤの掛け声が聞こえ、それに続いて皆がものべーへと駆け出した。

「よし、俺達も行こうか」

 皆へ声を掛け、ルゥと自分へ移動力向上アーツシルファリオンを掛け、俺達もナーヤ達に続いて中枢を後にする。
 道中、サレスにアネリスの事を訊かれたので掻い摘んで説明すると、流石に驚かれた。
 『第一位神剣』と聞いて、驚きに眼を見開くサレスの表情は中々に見ないもので、ちょっと気分が良かったのは秘密だ。


                  ◇◆◇


 『理想幹』中枢より脱出する彼等を見つめる者達が居る。
 一人は、鈴の髪飾りを着け、その背に鳳凰の翼を湛えた少女──スールード。
 彼女は中枢の様子を高空より見下ろしながら、隣に居る人物へ話しかけた。

「……さて、貴女達の『目的のモノ』は出てきましたが……いかがですか?」

 その問に対して、問われた人物は静かに頭を振る。それに合わせ、その裸身を包む純白のローブがさらりと揺れ、風に吹かれてその内を一瞬さらけ出し、相変わらずの格好だ、とスールードは小さく溜息をついた。

「これじゃあダメね。直接食べるには……密度が薄いし、広がりすぎているもの。……かと言って、『抗体兵器』を持ち出す程の量でもないのよね」

 酷く残念そうに言ったその女性──赦しのイャガは、それはそうと、とその視線を既に随分と小さくなった“彼等”へと向ける。

「ふふっ……ほんとうに美味しそう。あぁ……お腹が空いたわ……食べてしまいたい」
「ダメですよ」

 熱に浮かされた様に喋り、今にも飛び出そうと言う雰囲気のイャガだったが、スールードにピシャリといい含められ、「解っているわ」と、しかし残念そうに頷く。

「……今回、あの管理神達が『アレ』をこの程度しか出して来なかった以上、彼等にはもう少し頑張って、管理神達を追い詰めてもらわねばならないのですから。幸いにも彼等には再びここを訪れる“理由”が出来たようですし」

 『ログ領域』に入った者のうち、出てこなかった者の姿を思い出しながら言うスールードは、ちらりと眼下の、既に黒い影にしか見えない一人へ視線を向け、「それに……」と言葉を続ける。

「“彼”は私のモノです」

 逢う度に人間ヒトの素晴らしさを見せてくれる“彼”の事を思い出し、くすくすと、愉しそうに笑う。
 そんなスールードの様子を見ながら、イャガもまたその口角を小さく上げる。

「解っているわ。けど……貴女がそこまで執着する“彼”。きっととても美味しいのでしょうね」

 そう言って、恍惚とした表情を浮かべたイャガだったが、次の瞬間にはその表情を元に戻した。

「それで、その“彼”が呼び出したと思われるアレ。アレは一体何なのかしら?」

 イャガの脳裏に浮かぶのは、『悠久』のエターナルとそっくりな少女。だが、その戦い方はイャガから見ても『非常識』に尽きた。
 大量に魔法を撃ち込まれてもものともしない防御力に、周囲に群がるミニオン達を一息に一掃する攻撃力。その言葉だけを見れば、イャガやスールードとて同様のことは出来る。
 けれど、アレは違った。何かが、根本的に違ったのだ。
 しかしイャガの問に対して、スールードは頭を振って答える。

「解りません。少なくとも私は初めて見ました。どちらにしろ、相対する場合は油断はしない方が良いでしょう。貴女も、私も」

 厳しい顔で言うスールードへ、イャガは「そうね」と返すと、眼前に己が神獣である、次元鯨の『パララルネクス』を呼び出した。

「どちらへ?」
「“食事”よ。だって彼等を見ていたらお腹が空いたんですもの。……余り派手に動いたりしないから大丈夫よ。それじゃあ、またね」

 そんな言葉を残し、スールードが何か返す前にパララルネクスへ乗り、飛び去るイャガ。
 それを見送ったスールードは、今しがた隣に居た彼女と、その背後に居る存在の事を思い浮かべ、やれやれと溜息を吐いた。

「それにしても……“眼の上の瘤”を取り除くためとは言え、『叢雲』の力を求めるなど……『法皇テムオリン』。随分と無茶をするものです」

 そのためには彼女は確かに適任ですが、と独り言ちた彼女は、気持ちを切り替える様に小さく数度首を振り、再びその視線を、既に見えなくなった“彼”へと向けて、言葉を紡ぐ。

「さて、青道祐。貴方は一体、次は何を魅せてくれるのですか……?」

 きっと彼等ならば、『最後の聖母』でも、『法皇』が相手であったとしても、決して諦めずに立ち向かう、人間ひとの愛おしさを魅せてくれるに違いない、と想いを馳せながら。
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  1. 2013/06/07(金) 01:03:25|
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