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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

永遠神剣之章:60.決着へ、向けて。

 どうやら容態の安定したらしいエヴォリアの様子に、一度深く息を吐いた。

 正直身体がだるい……マナも魔力も足りない。オーブメントに残ってる導力EPは『機構2』のクォーツで徐々に回復するとは言え、こちらも現状ほぼ空だ。せいぜい残ってるのは気力と体力ぐらいか。……何とも無い無い尽くしだな。と、散々な現状に思わず苦笑が漏れる。
 とは言え、これは覚悟の上のこと。
 この世界がマナの枯渇によって滅びたのだとしても、今日一日の僅かの間に、数多くのミニオンや守護者がマナに還った。
 大半は斬った神剣に吸収されるとは言え、それでもある程度は世界に吸収され、そのうちに僅かなれど世界の維持の為に使われるだろう。けど今ならば、それらはまだ大気に溶けた段階で漂っているはず。
 精神を集中し、それら大気のマナを体内に取り込み、取り込んだマナを身体に染み渡らせるように循環させる。
 …………よし。まだいける。
 ユーフィーとミゥが、「マナリンク、しますか?」と言ってきたが、連戦続きで彼女達とて消耗してる上、この先まだ──シティ内部に入ってからも──戦闘が有るだろう事を考えると、温存してもらった方が良いだろう。

「……って訳で、ユーフィーとミゥはここでエヴォリアを見ててくれ。流石に放置して置く訳には行かないしな」

 エヴォリアはどうやら気を失っているようで、ここに独りには出来ないし、ついでにミゥとユーフィーには、この後に備えて身体を休めてもらおう。
 そう言うと、ユーフィーはショウの方を見ながら「大丈夫ですか?」と訊いてくる。
 ……確かに『浄戒』の力を、スバルの分まで取り込んだのは脅威だけど。

「まあ大丈夫だろう。見るからに先程より力が落ちている。……身の丈に合わない力を持つとどうなるか、と言う良い見本だな」

 俺と同じ様に、ショウの様子を見ていて気付いたらしいルゥが言う。
 ルゥの言う通り、どうやらショウは『浄戒』を扱いきれていないらしい。……当然か。あれは元よりジルオル……世刻の力。寧ろ今の今まで、ここまで使いこなしていられた事の方が驚きだ。執念と言うべきか……やはり、人の“意志の力”は侮れない。

「それじゃ、ルゥとゼゥは黒、ポゥとワゥは白に行ってくれ。俺はショウに向かう」
「祐。確かに奴の力が落ちているとは言え、脅威な事には違いないのだから、油断はしないようにな」
「……マナよ、その身を守る力となれ……『ウィンドウィスパー』。……祐さん、気をつけてください」

 皆にそう声を掛け、返って来たルゥの言葉に片手を上げ、神剣魔法で風の護りを掛けてくれたポゥに「ありがとう」と応え、俺はショウへと駆け出した。
 とは言え、ショウ自身も己の力が抜けていっている事を自覚しているようで。近づくにつれその困惑した表情が見て取れた。

「どうやってやがる!? 力、力が……くそっ……くっそおおおおおおお!!!」
「はっ! 今の内に一気に畳みかけてやる!! いくっぜえええ!!」

 ショウの言葉にソルラスカが吼える。
 対するショウは、その言葉で我に返ったようにソルラスカ達を睨みつけ、『疑氷』を構えた。

「舐めるなよ! それでも貴様等を相手にするには充分なんだよ!!」

 その言葉と共に、雨霰の如く放たれる魔弾。地面を抉り、クレーターを創り、壁を、大地を、建物を消し飛ばす。
 俺はそれを遠めに見ながら、僅かに回復したマナの一部を魔力へと練りこみ『魔法の射手』を一発だけ生成。準発動段階まで持っていったところで、レーメにそのまま留めていてもらう。、
 次いで残りのマナをオーラフォトンへと変え、全身……は無理なので脚と右腕を中心に巡らせ、身体能力を向上。それと同時にナナシがクォーツの効果で回復した導力を使い、俺に移動力向上アーツシルファリオンを掛ける。
 ショウへ向けて一歩。
 『観望』は右手を覆う手甲ガントレットへと形状を変化させて。
 その間にも、一歩、二歩と踏み出すごとに、景色は流れる。
 ショウから放たれる魔弾の雨は、その殆どはソルラスカ達へと放たれたもの。とは言え流れ弾がこちらに来る事もあるのだが、それらはポゥがかけてくれた『ウィンドウィスパー』による大気の壁が、流す様に後ろに逸らしてくれた。
 そんな中、アーツとオーラフォトンにより強化された脚力により、俺の身体は正に飛ぶようにショウへと迫る。
 奴がこちらに気付き、慌てた様子で『疑氷』を構え、撃ち放ってきた。
 俺はそれを斜め前方へ大きく踏み込んで掠めるように躱し、続く一歩でショウの懐へ飛び込んで──とりあえず、一発、ぶん殴る!
 振りぬいた拳はショウの顔面へ吸い込まれ、それと同時に準発動段階になっていた『魔法の射手』を解放。ドゴンッ! と言う、凡そ拳で殴ったとは思えない音を立て、その身体を吹き飛ばした。まるで弾丸の如く。
 そしてそのまま建物へと轟音を立てて激突し、砂塵を巻き上げた。

「……悪い、遅くなった」

 思った以上にぶっ飛んだなぁ何て思いつつ、突然の俺の強襲に驚いたか、硬直していたソルラスカ達へと声を掛ける。と、それで我に返ったらしいソルラスカが「お、おお」と返事をし、「……で、あっちはどうなの?」とヤツィータが問いかけて来た。

「ああ、何とか肉体の崩壊は止められた。意識はまだ戻ってないけど、恐らく大丈夫だと思うよ」

 ヤツィータの問いに、少し離れた所にいるベルバルザードがピクリと反応するのを視界に納めつつ答えると、ベルバルザードがこちらに静かに近付いてくる。

「……事情は聴いた。エヴォリアの“想い”と“命”を救ってくれた事、感謝する」

 まさかこうも真っ直ぐに礼を言われるとは。
 彼に「俺が勝手にやった事だから、気にするな」と返したところで、ショウがぶっ飛んでった辺りから瓦礫が崩れる音がした。
 直後、爆発するように瓦礫が弾け、崩れ落ちるるとともに、砂塵の中からショウが再びその姿を現した。
 ほぼ不意打ちの上に相手の攻撃の直後だったからか、ブロックが間に合わなかったのだろう、その顔は表面の皮膚組織が大きく裂け、内部の金属が見えている。要するに、以前スバルが、世刻との力のぶつかり合いの末になった様な状態だ。

「何なんだ……何なんだよ貴様等は!! 貴様等さえ来なければ!! 俺達は日々を続けられたと言うのに!! ……死ね。死ね! 死ね!! 俺の、邪魔を、するんじゃねえええええ!!!」

 叫びながら放ってきた一撃。怒気と殺気を多分に孕んだその一撃は、しかして先程までよりも格段に威力が落ちていて、タリアの迎撃によって相殺される。……それでも渾身の一撃でなければいけなかったようであり、油断は禁物なのは変わらないのだけど。
 とは言え、それによって己の力が随分落ちてしまった事に気付いたのだろう、ショウがその顔に苦々しい表情を浮かべる。
 その時、俺達から少し離れた場所で戦っている姿の見えていた、黒と白の守護者が、その体躯をマナへと変えていくのが見て取れた。
 まぁ、ルゥ達が参戦したのだから、早々に片付いても当然かと思いながらショウを見ると、彼はその表情を更に歪め、声を張り上げる。

「ちっ……役立たず共がっ! 一度退いて傷を直さねえと……くそったれ! おい、『セントラル』! 結界を張って時間を稼げ!! ……? ……おい、聞こえないのか! 『セントラル』!!」

 流石に現状では不利を悟ったか、退く事にしたらしいショウだが、どうも様子がおかしい。
 なんだか知らないが、今の内に畳み掛けられるだけ畳み掛けておこうと、ソルラスカ達と一瞬顔を見合わせて頷き合う。
 だが、一歩踏み出したところでこちらの動きに気付いたらしいショウが、悪態をつきながらも弾幕を張ってきたために、足を止めて防戦に入らざるを得なくなる。
 そして、その弾幕を凌ぎきった後には、既にそこにショウの姿は無かった。

「……どうなってやがる?」

 そんなソルラスカの疑問は、余りにもアッサリとした引き際によるものだろう。
 それに対して「何か様子がおかしかったわね」と言うヤツィータ。
 と、両肩に何かが乗る感触。今の弾幕から逃れるために、俺の後ろに退避していたナナシとレーメが座ったか。そう思ったところで、予想通りと言うか、耳元で「それなのですが」とナナシの声が聴こえた。

「少々感覚を広げて探ってみたのですが、どうやら『セントラル』との通信が途絶えたようですね」
「ってことは、『セントラル』に何かがあって連絡が取れなくなったから、慌てて戻ったってこと?」
「確信はできませんが、状況から察するに十中八九は間違いないかと」

 そんなナナシとタリアのやり取りを耳に入れつつ、俺は小さく溜息を吐いた。……現状でセントラルに何かがあったとするなら、それを行ったのは恐らくスバルだろう。とは言え所詮は予想に過ぎないので、事実を確かめるためにもセントラルタワーに行くしかないんだけどな。
 案の定と言うか──他に選択肢は無いのだが──合流したサレスにショウの様子を伝えると、どちらにしろ進むしかないと言う結論に達する。
 とは言え向こうに“何か”があったのなら、この機を逃すわけには行かないという。そのため少々強行軍だが直ぐに先に進む事となった。
 ちなみに、エヴォリアは未だ気を失ったままだったので、この場にベルバルザードに残ってもらい、後を任せた。……大丈夫だろうとは思うが、流石に誰も側に付かずに、彼等だけをものべーに乗せるわけには行かないからな。
 ……この世界での戦いももうじき終わるだろう。
 今のところ俺達の有利に進んでいるが、またイレギュラーが起こらないとも限らない。最後まで気を引き締めていこう。


             ◇◆◇


 入り乱れるはマナの奔流。漂うは戦場の気配。ぶつかり合うはエゴとエゴ。
 その濃密なる混沌は、『ソレ』を呼び覚ました。

「ふ……ふふ」

 『ソレ』は忘れていた『己』を思い出し。くつくつと笑う。

「ふふ、うふふふ、ふふふふふ」

 笑う。嗤う。哂う。微笑う。

 戦場を見て、世界を視て、人々を看て。戦う者達を、観て。

 「……あぁ……なんて──」

 囁く様に、慈愛に満ちた、甘く、柔らかな、楽しそうで、嬉しそうな声で、言う。



 ──罪深いおいしそうな人たち。
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  1. 2012/12/05(水) 02:50:38|
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