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夢幻の残響

二次創作なんかを書いてみたり。

永遠神剣之章:59.想い、受けて。

 物事、上手く行っていると思う時に限って落とし穴があると言うけれど……これはきっと、俺の油断と慢心だったのだろう。

 南天神の亡霊達を退け、エヴォリアに対し、「これで俺達に敵対する理由はなくなったな?」と言ってやると、彼女は「ふんっ」とそっぽを向きつつ、小さく「そうね」と呟いていた。
 恐らくはエヴォリアが止めたのだろう、いつの間にかミニオン達が戦闘行動を止めていたからか、「どうなってるの?」と言うような表情を浮かべて俺の元へ集まってきたルゥとユーフィー、ナーヤ。そして道の向こうに見えたサレス達が来るのを待って、俺の行った事と、エヴォリアの許可を得て、彼女の事情を軽く説明した。
 この場にあと居ないのは、世刻と永峰、暁。そしてカティマとミゥとゼゥか。
 ぐるりと見回してそう思った所で、その声が、後ろから聴こえた。

「祐さん!」
「祐!」

 どこか悲鳴にも似た、その声。
 そして、少し離れて俺の正面に立つエヴォリアの、驚いて、すぐに険しく変わった表情。
 何だ、と、振り向いた俺の目に飛び込んできた、その姿と声。

「見つけたぞ! 貴様のせいで、スバルは!」

 引き絞られている『疑氷』に収束されているマナ。
 離れてなお濃密にして強力と解るそれは、俺が身構えるよりも速く撃ち出され、迫る閃光に、それでも何とか防御しようとして── とん、と、押される感触と共に、押しのけられる身体。
 不意を突かれてたたらを踏みつつも、顔を向けたそこには、何故か微笑んでいる、エヴォリア。

 『疑氷』の一撃が、彼女の腹部を貫いていく光景が、まるでスローモーションの様に──。

 これはきっと、今の段階でショウが来るとは思っていなかった、俺の油断と慢心。
 それでも思わずにはいられない。
 異分子イレギュラーによって救われた、後に失われる運命であった命は、想定外イレギュラーな出来事によって奪われると言うのか。
 これで、辻褄を合わせようとでも言うのか、世界よ。

 ──ふざけるな。

 倒れてくるエヴォリアを受け止め、地面に静かに横たえる。
 射抜かれたのは腹部だというのに、彼女の全身から静かにマナが立ち上り、大気に消えていく。
 ……拙い。

「『アセラス』!」
「『ティア・オル』!」

 俺が何か言うよりも早く、ナナシとレーメの声が響いた。
 発動されたアーツ──上位蘇生アーツの『アセラス』と最上位単体回復アーツの『ティア・オル』──は、その効果を直ぐに現し、エヴォリアの傷を癒す。それでも、彼女の身体から立ち上るマナは止まらない。

「……無駄よ。何か……大事なモノを持っていかれたみたい……だから。流石……は、腐っても『浄戒』……って、ところかしら」

 瞬時に塞がれた腹の傷に驚きつつもそう言って、「でもこれで、綺麗な身体で逝けるわね」なんて事をいいやがる。
 ……第一、なんで本来の持ち主でもないショウが、そんな、『浄戒』が曲がりなりにも『浄戒』たる力を発揮させるほどの威力を出せる……? ……まさか!?

「ショウめ、スバルの『浄戒』を!?」

 俺と同じ考えに至ったのだろう、サレスがそんな声を上げ、それに対してそのショウの声が答えた。

「そうとも! スバルは今治療中で当分動けんからな、ならば俺が使ってやろうと思ったんだが……くくっ……ははははははは!!!! 分かたれていた2つを併せた今、俺は最強だ!!! 素晴らしいぞ、この力は!? 貴様等全員を殺すには充分すぎる……ははっははは! はははははははははははは!!!!」

 ……完全に力に呑まれている。けど、「分かたれていた2つ」って認識してるって事は……セントラルが、世界の維持に本体を使ってるって事は知らないのか。
 そう思いサレスを見ると、やはりサレスもその結論に達したか、頷いて返してきた。
 ……いや、今はいい。あんな奴の事など、どうでもいい。それよりも今は、目の前にある彼女を──
 そんな俺の思考でも伝わったか、ショウの激昂する声が響く。

「貴様等、俺を、無視してんじゃねええーーーー!!!!」

 膨れあがるマナ。けど、膨れ上がったマナは、ショウのものだけではなかった。

「ならば……貴様の相手は我がしてくれよう!」

 そんな声と共に、ショウの背後に現れた気配は、その手にした武器を振り下ろす。
 ズンッ! と、地響きを立て、小さなクレーターが出来るほどの威力で。

「ちっ! どいつもこいつも俺の邪魔をしやがって!! いいだろう、まとめて殺してやる!!!!」

 その攻撃から咄嗟に飛びすさっていたショウは、その弓を、今自分に攻撃してきた相手へと──ベルバルザードへと──向け、それと共に聴こえて来た、翼のはためく音。
 まさか、と思い顔を向ければ、地面を舐める様に飛んできて、ショウの背後へと地響きを立てて着地した、白と黒の巨龍。
 あのヤロウ、ガーディアンまで連れてきやがったのか!?
 それに対してベルバルザードは、こちらを一瞥し、庇う様な位置を取った。その背中は、まるでエヴォリアを頼むと言っているようで。……そんな意志を感じたのは、気のせいじゃないだろう。
 ……ならば、今の俺に出来る事は、その願いに応えること。

「まぁ……故郷と妹を助けてもら……った、代金としては……充分、でしょう?」

 けれどエヴォリアは俺へ、そんな事を言ってきやがって……カッと、頭が熱くなるのを感じた。

「……ふざけるな……! こんな結果にするために、お前を助けたわけじゃない! 認めねえぞ……絶対に……助けてやる!」

 言葉が口をつく。
 そうだ、認めてなるものか。諦めてなるものか。
 いくら『浄戒』の一撃とは言え、所詮は本来の持ち主でもないショウが意識もせずに放ったものだ。ならばその効果とて不完全のはず。ミニオン達が致命傷を受けて消える時と違って、エヴォリアの身体から立ち上るマナがある程度緩やかで、直ぐにその身体が消えなかったのがその証左になるだろう。
 では何故立ち上るマナが止まらない? ……恐らくは消耗し、消えていく状態ではその傷ついた『神名』の修復へ、マナを回す余裕が無いからではないか?
 だったら、外部から不足分のマナを流し込んで、彼女の『神名』……否、魂を修復する分のマナを確保してやれば……。

(うむ、吾も同意見だ。……極論を言えば、それが合っているかどうかなど確かめる術は無いからな。そうだと信じてやるしかあるまい)

 俺の考えに同意するレーメの念話に、レーメもそう思うかと、少しだけ安堵する。
 どちらにしろ、俺にはもうこれしか方法が思いつかない。……だったら、この方法に全力をかけてやる!
 そう心に決め、腹に力を入れる。
 ──頼む、『観望』、力を貸してくれ。
 俺の願いに応えて、『観望』から力が流れ込んでくるのを感じ、それをもって、エヴォリアの全身を“視”て、最もマナの流出している場所を探る。
 …………“視”えた。当然と言えばそうではあるのだが、やはり先程一撃を受けた腹部の様だ。
 その箇所へ、正確に手を当て──マナリンクの要領で、俺のマナを、流し込む!

「っ!? くぅ……あぁっ! ……ふぅっ……あ……!!」

 朦朧としているところに突然マナを流し込まれて驚いたか、ビクンと、エヴォリアの身体が跳ねた。
 辛いだろうが我慢してくれ。こっちだって必至なんだ。
 大気のマナを取り込み、己のものへ。それと共に魔力をマナへと逆変換し、マナリンクへと回す。
 ……まだだ、まだ、足りない。まだ、供給量が消費量に追いついていない。
 焦りながらも、瞳を閉じ、マナを練り上げる事に集中していると、

「……本当に、助ける必要があるの?」

 そんな言葉が聴こえた。
 眼を開けると、タリアが憮然とした顔でこちらを──否、エヴォリアをねめつけていて。

「……そうね。確かに、どんな事情があれ、彼女がしてきた事を、私達は『仕方ない』で済ます事はできないわね」

 タリアに答えたのは、ヤツィータ。
 酷い、なんて事は言えない。旅団の皆にしてみれば、ずっと戦って──殺し合いをしてきた相手なのだから。

「確かに、タリアやヤツィータの言う事が尤もだぜ。俺達にしてみれば、エヴォリアの奴を助けるなんてのは馬鹿な行為だ」

 続くソルラスカの声。
 そして、その手に填められた神剣『荒神』を構え、一歩踏み出すのが視界に入った。

「けどな。必至になってる仲間ヤツが居るのに見捨てるのは……馬鹿ですらねえ。それなら俺は、馬鹿になってやるよ!」

 「それに、エヴォリアが祐を庇ったのも事実だしな」そんな言葉を残して、ソルラスカは、ショウへ向かって駆けて行った。
 そして、苦笑しながら顔を見合わせ、それに続くタリアとヤツィータ。それと入れ違う様に、カティマ達と、今しがた着いたのだろう、世刻達がやってきて、サレスに現状の説明を受けていた。

「……ねえ青道君。貴方はどうして、そこまでして彼女を助けようとするの?」

 それを待って、と言うわけではないのだろうが、そんな問を斑鳩が発して来て、全員の視線が、俺と斑鳩に集まるのを感じる。

「……別に理由なんてないさ。強いて言うなら、自分のため、だ」
「え?」
「事情を知りながら何もしなければ、俺は絶対に後悔した。だから助けた。そしてその助けた命が、こんな理不尽に奪われようとしている。……そんなのは、認められない。認めたくない。……それだけだよ。全部俺が、俺自身が後悔しないために、自分の行動を誇れるためにやってるだけさ」

 その俺の言葉に、斑鳩は「そっか」とだけ言葉を紡ぐ。
 それを聴いていた世刻と永峰、暁、そしてルプトナは頷き合うと、白の守護者へ、斑鳩とカティマ、ナーヤ、そしてサレスは黒の守護者へとその足を向けて。

「まさかわらわ達が、エヴォリアを助けるために敵に挑むとはな。……まったく、わからぬものじゃ」
「それはきっと、皆が思っていることだろうさ。だが……こんなのもまあ、たまには悪くない」
「それじゃ、俺達も後悔しないために、行ってきます」

 ナーヤと暁のやり取りと、それを受けた世刻の言葉を合図に、駆けて行く皆。
 本当に、有り難い。
 皆が皆、俺のわがままに付き合ってくれて……助けて、くれて。だから、それに応えないといけない。何が何でも。
 そう改めて決意して、エヴォリアへと意識を向けた、その時。彼女へ触れさせている左手に、誰かの手が重ねられた。
 顔を上げると、真剣な眼差しで俺を見るユーフィーと、眼が合った。

「祐兄さん、あたしの力、使ってください」

 そんな言葉と共に、俺の手を通して、ユーフィーのマナが流れていくのを感じる。

「あたしはその人がどんな人かとか、全然知りません。解るのは、あの時祐兄さんに酷い事した人だって事だけですけど……それでも、祐兄さんが助けたいって言うんなら、あたしも手伝います」

 だから、頑張りましょう! そう言ってニコリと笑うユーフィー。
 そんな彼女へ「ああ」と頷いて返した時、次いで俺の右手を握る誰か。
 そちらを向けば、ミゥが両手で俺の手を握っていた。まるで、祈る様に。

「祐さん。正直言えば、私は上手く割り切れません。これでも旅団に所属してきた身ですから。……ですが、貴方を信じる事はできます。だから私は、彼女を助けたいと言う、貴方を信じます」

 そして、流し込まれる暖かなマナ。

「……ありがとう」

 それしか俺に言う事はできない。だから、必ず助けよう。そう改めて心に誓い、俺はミゥから受け取ったマナを、そのままエヴォリアへと流し込む。
 けれど。
 ミゥとユーフィーに手伝ってもらって。
 他の皆も、俺達に邪魔が入らないようにしてくれて。
 それでも、事態は好転しない。
 エヴォリアの身体から立ち上る、マナが消えない。
 ……焦るな、諦めるな。
 けど、俺のマナももう限界に近い。焦りたくなくても、焦燥が募る。

「……祐さん」

 そんな時、ミゥに名を呼ばれ、彼女の方を見ると、ミゥは一瞬逡巡し、直ぐに決意したような顔になる。

「ミゥ?」

 そんなミゥに声を掛けると、彼女は静かに俺の手を離し、距離を詰め、俺の頬に手をそっと添えて──おもむろに、彼女の唇が、俺のそれと重ねられた。

「!?」
「……ん……ふ……」

 突然の出来事に思考が停止して、その間にミゥの顔が離れる。頬が赤い。可愛いな。俺もきっと赤い。他のクリストの皆は俺の後ろに居て様子は見えないけど、見えなくて良いのかもしれない。何かプレッシャー凄いもの。と、重ねられたままのユーフィーの手に、キュっと力が入るのを感じたところで、

「その、突然申し訳ありません」

 そう言ってきたミゥに、俺は「ああ、いや、まあ、別にいい」としか言えなかった。しっかりしろ俺。
 次いでミゥは、俺の空いた右手を、再び握る。
 そして彼女は、静かに、囁く様に、言葉を紡ぐ。

「晴天みたす輝きよ、大いなる白き乙女よ照覧あれ。

 我ら果て無き虚空にたゆたう光。
 独り生じ独り消える定めならば。
 対なる光を灯火として無明の空をゆく翼と為す。

 我と汝は、あざなえる光。
 我は汝と共に輝き、汝は我と共に消えゆく。
 名付けて曰く、命」

 キンッと、彼女と俺の間に、薄っすらとだが、“何か”が繋がったのを感じて、ミゥがほっとした気配。
 その直後、ミゥは再び、マナリンクを行って俺にマナを通す。

「これ……は」

 先程までと、違う。今繋がった“何か”のお陰だろうか、先程までよりもミゥから流れてくるマナの量が多い……いや、ロスが少ない、と言った方がいいだろうか。

「どう言う事だ?」

 そう訊ねる俺に対し、ミゥがマナを流しながら説明してくれた。
 何でも、クリスト族には同族間で『同調』という現象を起こせるそうだ。同調した相手の能力を使ったり、経験を追体験したり、と色々出来るらしいが。
 そしてクリスト族ではない者がクリスト族と同調する方法。それが、クリスト族と契る──つまり身体を重ねる──事だと言うのだが、今ここでそんなことは出来ない。なので、唇を重ねる事によってそれの代わりとし、簡易にでも俺とミゥの間にパスを繋いだ、と言うことらしい。
 彼女の説明が終わったところで、ミゥが俺と繋いでいる手と、逆の手を他のクリストの皆が取っていた。
 彼女達は皆瞳を瞑り、意識を集中させているようで──直後、大量のマナが、ミゥを通じて俺に流れ込んできた。
 冷厳なる氷晶の、大いなる深遠の、優しき深緑の、猛き炎熱の──ルゥ達の、マナが。
 その受け取ったマナを流した、その時。それまでは依然として消費量の方が多かったのか止まらなかった、彼女の身体から立ち上っていたマナ──が、消えた。
 とは言えまだわからないので、気力を振り絞ってもう暫くマナを流し続ける。
 そして──。

「……崩壊が、止まった」

 エヴォリアの身体から手を離し、マナを流すのを止めて尚、彼女の身体に変化が起こる兆しは無く──俺達はようやく、大きく安堵の息を吐いた。
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